自衛隊「オスプレイ」、佐賀空港配備の裏側 基地の佐賀移転はすでに米国側が提案していた

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この米外交官の説明は、首肯できる部分が多い。屋良氏はこの証言を記した自著(『砂上の同盟-米軍再編が明かすウソ』2009年)を引用しながら、米国側が佐賀空港への移転を提案した理由を次のように述べる。

まず、佐世保の海軍基地(自衛隊もある)に配備されている艦船と合わせて、機能を集約できる。九州には自衛隊の訓練場がいくつもあるので、狭くて演習の制限が多い沖縄にこもるよりも条件がいい。また、佐賀空港から強襲揚陸艦の母港である佐世保までは55キロメートルと近い。同空港は滑走路は有明海に面しており、ヘリコプターは海上を飛べば騒音問題も少ない。

北朝鮮有事でも、沖縄より佐賀が有利

また、自衛隊にとっても、陸上自衛隊西部方面隊総監部がある熊本県・健軍駐屯地まで58キロメートル、近場には福岡駐屯地が45キロメートルの距離にある。実際に演習場も近く、西日本最大の日出生台演習場(大分県、4900ヘクタール)まで98キロメートル。自衛官と海兵隊員が寝食を共にしながら共同訓練することも可能だ。

沖縄本島の延長120キロメートルを半径にして、佐賀空港を起点に円を描くと、九州中北部に演習場、港、駐屯地の全機能がすっぽり入るという。小さな沖縄と比べて広い演習場がある九州なら、海兵隊も十分に訓練して、自衛隊との「インターオペラビリティ」(相互運用性)も高めることができる。しかも、日本が最も脅威を感じる北朝鮮に対しても、佐賀空港との距離は760キロメートル。沖縄からの距離1400キロメートルのほぼ半分。まさに、ナイス・ロケーションである。

だが、日本政府はこの提案をしたときに「黙って聞いているだけで何も反応がなかったと(米外交官に)聞いた」(屋良氏)。それ以後は話題にもならず、「その後の取材でも佐賀空港について耳にすることはなかった」と屋良氏は振り返る。

武田副大臣は、「なぜ佐賀なのか」という質問には、「地理的な要素、環境面、運用面などなど、総合的に判断した結果」と記者会見で述べた。また、沖縄の基地負担軽減についても、「(移転先として)可能性のあるさまざまな地域を検討してきたが、(前述のような理由を元に)佐賀空港がベストと判断した」と話す。

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