北朝鮮の特別調査委員長、ソ・テハ氏とは何者? 実は「ミスターX」こと柳敬の後継者の一人

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7月4日、安倍首相に要望書を手渡す拉致被害者家族(写真:ロイター/アフロ)

北朝鮮の特別調査委員長に就いたソ・テハ氏とは何者か。北朝鮮を通じて公表された肩書は、「国防委員会安全担当参事」兼「国家安全保衛部副部長」。国防委員会は北朝鮮の国家最高権力機関、国家安全保衛部は秘密警察にそれぞれあたる。

内外の北朝鮮専門家の間で既に分かっていることは、ソ氏は朝鮮人民軍(KPA)出身。北朝鮮指導者の動向を注視する専門サイト「ノースコリア・リーダーシップ・ウォッチ」を運営するマイケル・マッデン氏は、ソ氏が、2011年に粛清、処刑された柳敬(リュ・ギョン) 国家安全保衛部副部長(当時)の後継者の一人であることを明らかにした。柳氏は2002年の日朝首脳会談で田中均・外務省アジア大洋州局長(当時)の交渉役を務めた「ミスターX」として知られる。

マッデン氏はその上で、国家安全保衛部での「副部長」という肩書がメディア上や外交時での対外的に用いられる役職名に過ぎず、実態が伴っていない可能性も示唆した。また、ソ氏は、他の国家安全保衛部の幹部と同様、朝鮮人民軍での階級を有しているが、KPA参謀本部や人民武力部の指揮命令系統には入っていないという。

菅官房長官は3日の記者会見で、ソ氏の国防委員会安全担当参事との役職について、「今回の特別任務のために必要に応じて設置された」と説明。「副大臣級で国の安全保障問題を担当する」と述べた。

ソ氏は70歳前後

ソ氏はそもそも他の重要職を兼務する8人前後からなる国防委員会参事のうちの1人。金正日総書記から金正恩第一書記に引き継がれた、最高幹部からなる「常務組(サンムジョ)」の一人であるともみられている。

こうした常務組の最高指導者の大物側近たちが、日本の拉致問題を調査する特別任務を担う実働部隊を動かすとみられる。常務組は特別のミッションの遂行を担っているため、一般に他の幹部グループからは切り離されている。そして、豊富な人的、金銭的な資源を注ぎ込む強大な権力を有しているとみられている。

日本人の中でソ・テハ氏に会った人物がいる。故・金正日総書記の専属料理人を務めた藤本健二氏だ。藤本氏は4日、私の取材に対し、1995年に平壌の中心街にある迎賓館「木蘭館(モンラングァン)」でソ氏に会ったことを明らかにした。当時のソ氏の役職については「わかるはずがない」と述べた。ソ氏は現在70歳前後であるという。

高橋 浩祐 米外交・安全保障専門オンライン誌「ディプロマット」東京特派員

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たかはし こうすけ / Kosuke Takahashi

米外交・安全保障専門オンライン誌『ディプロマット』東京特派員。英国の軍事専門誌『ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリー』前特派員。1993年3月慶応義塾大学経済学部卒、2003年12月米国コロンビア大学大学院でジャーナリズム、国際関係公共政策の修士号取得。ハフィントンポスト日本版編集長や日経CNBCコメンテーターなどを歴任。朝日新聞社、ブルームバーグ・ニューズ、 ウォール・ストリート・ジャーナル日本版、ロイター通信で記者や編集者を務めた経験を持つ。

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