バイデン大統領は中国への強硬策をやめられない 新政権の政策を「予言」した米国政治学者に聞く
――共和党との交渉の過程で超党派合意を断念した場合、バイデン政権の中国政策は変化するのでしょうか。
ある程度は変化するだろう。しかし、あくまでこのダイナミクスの起点は、中国パワーという外部環境にある。
かつての関与政策では「中国は経済発展とともに民主化が進む」という希望があったが、実際には中国は大幅な国力増大とともに、むしろ専制主義を強め、少数民族への抑圧や南シナ海での軍事的示威活動を拡大させた。アメリカの2大政党が中国に対し懐疑的になったのはそのためだ。
今では中国が何をすれば、アメリカの懸念を緩和させることができるのかを想像するのは難しい。なるほど、中国は「南シナ海で譲歩して、そうした軍事的示威活動をやめます」というかもしれない。しかし、それが「世界最大の経済大国が全体主義になる」というアメリカ人の根本的な恐怖を変えるとは思えない。
いまアメリカで起きている地殻変動は、中国のパワーに関するものであり、アメリカは中国が非常に強大な専制主義国になることを我慢できない。
中間選挙で負けても「中国カード」は切り続ける
――そうなると、来年秋の中間選挙で仮に民主党が敗北したとしても、中国に対する根本的な姿勢は変わりそうにありません。
中国への懐疑や強硬な姿勢は、トランプ氏から左派のウォーレン氏(民主党の上院議員)までほぼ全員のコンセンサスだ。そのうえでトランプ氏なら報復関税や「武漢ウイルス」といったパンデミック(感染症の世界的流行)での責任追及、外国人排斥に焦点を合わせるだろう。一方でウォーレン氏のような左派は、ジェノサイド(集団虐殺)や人権問題を重視する。
中間選挙では与党が負ける傾向があるため、次の選挙で共和党が勝つ可能性は高い。そうなれば、トランプ氏の影響力が強い共和党はすぐにバイデン政権を破壊しようと動くだろう。
中間選挙で民主党が負けたら、バイデン政権はもっと中国カードの使用を増やすことになると思う。それを使わなければ、どうやって法律を成立させるのかという状況に直面せざるをえないからだ。そして、中国に対抗するために必要な投資や政策を立案するインセンティブが一段と高まる。
共和党は、バイデン政権に絶対勝たせたくない。しかし、その一方で中国との敵対上必要な法案では賛成せざるをえない。そうしたジレンマに陥る。その際、ワシントンへ大きな影響を与えるのは、中国をめぐるそのときどきの国際関係や交渉の状況だろう。
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