バイデン大統領は中国への強硬策をやめられない 新政権の政策を「予言」した米国政治学者に聞く

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――米中覇権争いの最終的な決着点や状況とはどんなものだと考えたらいいですか。

それは私も考えてきたテーマだ。アメリカは最終的な目標(エンドゲーム)を考えずに大冒険をする傾向がある。アメリカがイラクに侵攻したとき、サダム・フセインを排除する計画はあったが、ポストフセインの体制をどうするか、イラク国内の安定をどう確保するかについては考えていなかった。長期の視点に欠け、短期のビジョンしか持たなかった。

そして今、トランプ前政権に加え、バイデン政権も最終的な目標を定めないまま、今週や今月のことだけを考えて中国政策を進めている。アメリカは中国政策における最終目標をもっと考えるべきだと思う。

中国政策について、バイデン大統領は21世紀を勝ち抜くための米中競争と言った。重要なのは、「では、その勝利とは何を意味するのか」だ。私がバイデン政権に提案したいのは、中国との競争を終えるためには何が起きる必要があるかを考えることだ。

中国政策の最終目標で3つの選択肢を例示

例えば、最終目標として単に「中国は南シナ海での軍事的行動をやめる具体的な政策変更を行えばいい」ということにしてみよう。しかしそれだけでは、中国は依然として強大であり続け、専制主義を維持することはありうる。

第2の可能性として、「中国が根本的に民主国家になること」を最終目標とすることが考えられる。それが実現したとき、アメリカは競争関係を緩和し始め、中国を欧州や日本と同じように見ることになるだろう。

第3の可能性は、最終目標として、究極的には1991年にソ連が崩壊したように、中国の国力が弱体化する必要があると考えることだ。それによって、ワシントンは初めて中国との戦略的競争関係は終結したと満足するのかもしれない。もちろんアメリカ政府はそんなことは絶対に明言しないだろうが。

私はアメリカにこうした選択肢のうち、どれを最終目標とするのかを考えてほしい。なぜなら、それが今行う戦略に影響を与えるからだ。たとえば、中国の民主化が最終ゴールだとしよう。それはすぐに実現しないし、10年や50年かかるかもしれない。しかしそれを最終目標とするなら、われわれは長い期間をかけて中国が民主化するための種を今日からまく必要がある。また、最終目標の実現を損なうような選択を今行うべきではない。

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