バイデン大統領は中国への強硬策をやめられない 新政権の政策を「予言」した米国政治学者に聞く
――確かに、産業政策に該当する「米国イノベーション・競争法」は超党派合意を得やすく、実際に法案は可決されました。しかし、バイデン政権の主要な経済・社会保障政策である「米国雇用計画」「米国家庭計画」はどうでしょうか。ここでは、財源確保のための大企業や富裕層への増税に共和党は猛反対し、これら計画に含まれる子育て支援や教育、高齢者介護などでの予算拡大は超党派合意が得られる可能性は高くありません。
米国雇用計画は基本的に道路や水、ICTといったインフラ投資などに2兆ドル(約218兆円)を拠出するものだが、バイデン政権は財源として法人増税を提案し、2017年にトランプ政権が行った法人減税の一部を巻き戻す姿勢を見せている。現在、共和党と交渉中で、バイデン政権は支出規模を2兆ドルから1.7兆ドル(約185兆円)に圧縮して歩み寄り、共和党も当初主張した6000億ドル(約65兆円)から9000億ドル(約98兆円)に支出規模を増やした。しかし、その差はまだ約2倍と大きく隔たっている。
バイデン民主党には2つの選択肢がある
共和党は、トランプ政権の目玉政策だった減税を巻き戻されたくないため、増税には大反対だ。バイデン政権が今後、何らかのディールに持ち込むかは不明だが、選択肢としては、①もっと規模を縮小して共和党に歩み寄り、超党派合意の意思を貫く、②「財政調整措置」という手法を使って民主党単独で法案を可決する――の2つがある。後者なら民主党議員全体の結束が不可欠でこれも簡単ではないが、それをやれば支出規模は削らずに済む。
もう1つのバイデン政権の目玉政策は米国家庭計画だ。これも規模は2兆ドル程度で、主に子育て支援や教育に拠出する。バイデン政権は年初に新型コロナウイルス対策を軸とした短期景気対策「米国救済計画」で2兆ドルの支出を実現しており、3つ合計するとざっと6兆ドル(約654兆円)になる。バイデン政権がいかに野心的かを示す金額だ。
アメリカでは、子育てへの公的支援はほかの先進国に比べ非常に遅れている。ただ米国家庭計画でも、バイデン政権は財源確保のために富裕層の所得増税を掲げ、これもトランプ政権が減税を行った分野だ。共和党はありえないと言っており、こちらも規模縮小による超党派合意か、米国雇用計画の後の来年に財政調整措置を使って民主党単独可決を図るかの選択を迫られている。
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