「風呂で飲食」平日に非日常を求める人たちの行動 コロナ禍で変わったそれぞれのリラックス方法

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この価値観の背景には、やはりエブリデイ・ウェルビーイング的な考え方が影響していると考えています。前述のとおり、コロナによって人々は休日やその先の暮らしにストレスのはけ口を期待しなくなっています。多くの場合、これは平日と休日のバランスの変化につながっていますが、一部の人には数時間後の自分の状況にですら期待を持たず、「今やりたいことは、今済ませておきたい」という考え方をもたらしているのではないでしょうか。

私たちはこの考え方を「アドリブ型行動」として注視しています。来週の日曜日に旅行に行く、金曜日の晩に飲み会がある、といった娯楽を事前に準備して期待して暮らす、いわば計画型の行動から、その日、その瞬間にやりたいことを解消していくアドリブ型の行動に変わっているのです

(出典:https://seedata.jp/)

いつでも、すぐにできる体験が重要に

アドリブ型の行動に着目すると、いつでもどこでも、その瞬間にやりたいことに行動を移せる起動速度の速さが、あらゆるアクティビティーや体験に求められるとも考えられます

その代表が、このコロナ禍で人気を圧倒的なものにしたニンテンドースイッチでしょう。ゲームフリークから一般層までを虜にするソフトウェアラインナップは当然としても、ポータブルでテレビを必要とせず、どこでも今すぐに楽しめるアクティビティーとして、コロナ禍以降の価値観にフィットしたとも考えられます。

コロナ禍における生活では、これまで以上に「いかにストレスと向き合うか」が重要になりました。そもそもコロナでストレスのかかる暮らしを強いられている中、そのはけ口となるような遊びの場も強く制限されています。

こうした中で、人々が自ずと導き出した解決策が、これまでに説明したようなエブリデイ・ウェルビーイングやアドリブ型の行動です。休日やこの先に期待できないからこそ、その日の中でストレスと楽しみのバランスをとっておく。楽しみは先送りにせず、今ここで消費しておきたい。そのためには、自分の先の行動を制限してしまうものを利用しない。こういった考え方を汲み取り、商品やサービスの設計に生かしていくことが、ニューノーマル時代におけるマーケティングや商品開発のカギとなるでしょう。

大川 将 SEEDATA チーフフューチャリスト

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おおかわしょう / Sho Okawa

慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科X-Designプログラム卒。大学院では新宿ゴールデン街を対象にしたエスノグラフィー研究を行う。2017年より株式会社SEEDATAのフューチャリストとして、生活者の定性的なリサーチをもとに幅広い業界のクライアントに対して生活者起点での未来の兆しを提供。現在は生活者のインサイトをデータベース化し企業に提供するSEEDATA GLOBALの構築に従事し、生活者インサイトデータベースを活用したコンサルティングサービスを企業に提供。

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