具体的には、昼休みに友人が配信しているオンラインのピラティスに参加したり、朝のシャワー入浴から夜に浴槽にしっかり浸かる入浴への切り替えなど。また、平日にわざわざ一から出汁をとってお手製のラーメンを作って食べてみたり、平日の楽しみ方に大きなバリエーションが出てきたとも話していました。
これまで、生活の中で抱えるストレスと、それに対するリフレッシュやリラックスという考え方は、暗黙のうちに1週間、あるいはそれ以上の中長期的なタームで設計されてきていました。「花金」という言葉に代表されるように、平日の仕事や家事、育児で抱えたストレスを、休日のバーベキューや旅行で解消するというのが通常でした。
ところがコロナ禍で休日への期待値が下がったことによりその均衡が崩れ、「休日にリフレッシュが望めないのならば平日に解消するしかない」というマインドを醸成しているのです。この考え方の変化を、私たちは「Weekly Well-being(ウィークリー・ウェルビーイング)」から「Everyday Well-being(エブリデイ・ウェルビーイング)」への変化と呼んでいます。
「月曜日の朝からノンアル」という贅沢
「エブリデイ・ウェルビーイング」という考え方は、端的に言えばその日のうちにストレスを解消しきり、翌日以降にリフレッシュやリラックスの期待を残さないということです。ほかの方へのインタビューでは、「お風呂の中に飲み物を持ち込んで長時間入浴を楽しむ」といった行動や、「ちょっと贅沢なお菓子やケーキをなんでもない平日に食べる」など、平日に何気なくできるプチラグジュアリーな行動です。
象徴的だったのは、「月曜日の朝からノンアルビールを飲む」という会社員のTさん(32歳)の発言です。
「普段平日の昼間からビールを飲む機会なんてない。なので、月曜の朝からノンアルのビールを飲むことで、ささやかな背徳感を楽しむことが贅沢感につながっている」
こういった発言をもとに考えれば、エブリデイ・ウェルビーイングにおける平日の贅沢感の作り方とは、ある行動の時間や場所を本来あるべきところからずらすことによって生み出されるケースが多いことがわかります。
休日にするべき行動を平日に、夜にするべき行動を朝に。もしくは、部屋ですべきことをお風呂で、ということもあるでしょう。こうした不規則な変化を生活に取り入れることで、土日に期待できない平日の過ごし方を、うまくプレミアム化することを試みていると考えられます。
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