日本アニメが「お得意様・中国」で抱える巨大爆弾 加速する「二極化」、生き残り策にも数々の難点

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もう1つ注目されるのは、現地でアニメを制作するという手段だ。前出のテレビ局関係者は「中国側は国産アニメを増やしたいと思っている。現地に制作会社作って、そこで制作した作品は(海外作品という扱いにならず)規制の網をかいくぐることが可能だ」と語る。

実際、あるアニメ制作会社は現地への”傀儡(かいらい)制作会社”の設立をコンサル企業から提案されている。現地に作った拠点に日本からアニメ制作ノウハウを移植すれば、見た目は中国企業・中身は日本企業という制作の環境を整えることができる。

ただ、これも簡単なことではない。「中国に赴任して、技術を指南できる人材を確保できるかが問題だ」(前出の制作会社幹部)。資金力に余裕がある一部の大手のみが取りうる手法になりそうだ。

「政治的発言」で映画祭への出展がキャンセルに

中国でのネットコンテンツ規制はまだ始まったばかりだ。当局ともやりとりを行う分部弁護士も、「今の段階ではわからないことが多い。中国当局側の内部基準、運用についても、詳細はまだ固まっていない印象だ」と話す。

上記に挙げてきたような対策では太刀打ちできない、まったく別の中国リスクも顕在化してきている。それが「言論リスク」だ。

今夏に中国で開催される、ある映画祭。ここに、ある日本アニメ映画の出展が決まっていたのだが、突如キャンセルになった。「理由は、当該作品の監督が過去にTwitterに投稿した内容だった」と製作出資する関係者は打ち明ける。香港で2020年に盛り上がった民主化運動を支持したツイートが問題視されたのだ。

香港や台湾、ウイグル、チベットなどをめぐる、作品関係者の過去の政治的発言を理由に当局が配信許可を出さない事例は、数年前から徐々に増えている。が、「(監督や関係者にも)言論の自由があり(政治的な)ツイートをしないでくれとはなかなか言いにくい。解決策はないだろう」(製作出資委員会関係者)。

日本アニメにとって大きな収益源である中国市場。しかし、規制強化や言論統制など、中国ならではのリスクは根強く残る。今後どのように中国と付き合うのか、難しい舵取りが続く。

井上 昌也 東洋経済 記者

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いのうえ まさや / Masaya Inoue

慶應義塾大学法学部政治学科卒業、同大メディア・コミュニケーション研究所修了。2019年東洋経済新報社に入社。現在はテレビ業界や動画配信、エンタメなどを担当。趣味は演劇鑑賞、スポーツ観戦。

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