日本アニメが「お得意様・中国」で抱える巨大爆弾 加速する「二極化」、生き残り策にも数々の難点
中国への配信権収入は、今や日本アニメにとって大きな収益源になっている。日本動画協会の調査によれば、2019年の日本アニメの市場規模は3017億円(前年比12%増)。10年前と比べ2倍に成長している。
2000年代は利益率の高いDVD販売などが市場成長の牽引役だったが、現在は中国、北米など海外からの収入がその代わりを担っている。とくに中国の存在感は大きく、「仮に中国での売り上げが5分の1になれば、海外向けは40%減少してしまう計算だ」(前出のアニメ制作会社幹部)。
「人気作品」と「新興作品」で前提が変わる
こうした中国規制強化が加速させるのは、稼げるアニメと稼げないアニメの「二極化」だ。
あるアニメ関係者は「(ドラえもんや名探偵コナンなど)誰もが知るビッグネーム作品は、内容などもおおよそわかるため審査がスムーズで、今後も高値で売れそうだ。一方、無名の深夜アニメで過激な描写が多いものはとくに厳しくマークされ、稼ぎにくくなるだろう」と話す。
日本のテレビ局関係者も「日本でヒットした人気作品については(配信事業者からの)引き合いも依然として強い。今後も表現などを規制される心配は少ないと思われる」と語る。人気作品と新興作品では前提の異なる勝負を強いられそうだ。
こうした中国の規制によるダメージを軽減すべく、日本のアニメ製作出資委員会もさまざまな対応を模索している。その1つが、中国の審査のスピードを考慮したスケジュールでアニメ制作を進めることだ。
前述の通り、新作アニメ作品に関しては日本と中国で同時配信できるようにすることが重要。そこでアニメ制作のスケジュールを早め、仮に中国側から一部表現にNGが出た場合でも、その修正に対応できるだけの時間的余裕を持たせようというのである。
とはいえ、ただでさえ遅れることの多い制作スケジュールをさらに前倒しして管理することには課題が多い。大手制作会社ならともかく、中小制作会社には人員の余裕もなく、すべてのアニメで中国配信に照準を合わせた制作スケジュールを組むのは現実的に難しそうだ。
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