ところで、4月からアメリカの長期金利上昇が止まり、そしてSell in May(5月に売り逃げろ)が過ぎても、アメリカ株市場が最高値圏を維持している。これは、FRBによる金融緩和が徹底されるという、筆者と同様の市場の期待が強いことが一因だろう。そして、FRBの金融政策への期待は、為替市場にも現れているとみられる。
ドル円市場だけ見ていると、年初の1ドル=103円台から6月には109円前後まで「ドル高円安」となっており、アメリカの一人勝ちによってドル高が進んでいるように見える。ただ、対ユーロ、人民元ではドル安基調が続いており、6月にFRBが算出するドル指数は年初来安値を更新している。
2021年のドル安を想定していた筆者にとって、ドル円が反転してここまで上昇しているのは正直想定外だった。ただ、ドル円以外で見ると、「アメリカの一人勝ち」の中にあってドル安が続いている現状は、ほぼ想定どおりの展開である。リスク資産の上昇が続き、FRBの金融緩和徹底への信認が、アメリカのインフレ期待上昇とドル安をもたらしていると筆者は解釈している。
出遅れの日本株にも上振れ余地が出る政策とは
これは、ECB(欧州中央銀行)の金融緩和が2022年早々に引き締めに転じるとの思惑、中国では不動産価格抑制が経済政策として重視されていることも大きい。ヨーロッパ・中国とアメリカとの金融経済政策の姿勢の差が、対ドルでのユーロ・人民元高をもたらしているだろう。
一方、ドル円だけはドル高円安になっているが、まずは日本がコロナ禍からの回復に遅れており、2021年の経済成長率が下振れていることが影響している。さらに、より重要な円安要因として日本銀行の金融緩和政策が、FRBよりも強力に行われていることが円安を促している、と筆者は見ている。
仮に、菅義偉政権の財政政策が、アメリカ同様に拡張方向に一段と踏み出せば、日銀の金融緩和が強まり、さらなるドル高円安も想定される。そうなれば、遅れている日本経済は急ピッチに回復するし、米欧に対して依然アンダーパフォーマンスしている日本株にも上振れ余地がでてくる。コロナ収束とともに秋口の総選挙を挟んで、菅政権の財政政策姿勢が変わるかどうかに筆者は引き続き注目している。
(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)
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