坂本龍馬も驚いた将軍「徳川慶喜の剛腕」と副作用

名だたる幕末の志士たちをやきもきさせた

続く、兵庫開港問題については一転して、慶喜は「国際信義の問題で解決を急ぐべき」だと真正面から主張。もともと開国派だった久光は有効な反論もできないまま、慶喜が会議をまとめてしまった。宴会では、慶喜の提案で記念写真まで撮影している。

翌日の朝議では、先延ばしにしようとする公卿を相手に、慶喜は「今日はぜひ勅命を下していただきたい」と粘ること実に30時間。とうとう朝廷の合意も取りつけて、兵庫開港を実現させてしまった。「兵庫港で自由に営業をおこなうべし」と堂々と公布し、新リーダー誕生をみなに強く印象付けたのである。

「大樹公は、暴力をもって摂政たちを脅迫した」

薩摩藩邸で待機していた大久保利通は、そう悔しがっている。「大樹公」とは将軍のことで、この場合は慶喜のことをいう。

大久保と西郷の闘志に火がついた

思えば、徳川慶喜と大久保利通は、勝負所で強気な姿勢に出るところが、よく似ていた。同じ政略家だけに、大久保には「自分が会議に出てさえいれば」という思いがあったに違いない。大久保は紛れもなく参謀だったにもかかわらず、身分の低さから宮中の会議に列席できなかったのである。

だが、歴史はわからないものだ。そんな身分の低さゆえの「下から目線」こそが、慶喜にはない大久保や西郷の強みだった。四侯会議で慶喜にしてやられたことが、かえって大久保と西郷の闘志に火をつけた。

滑り出しこそ順調に見えた慶喜政権。だが、派手なパフォーマンスはたいてい、グラグラした足元をごまかすために行われるものだ。

もはや孝明天皇の後ろ盾はない。だからこそ、開国へと大胆に踏み切れたわけだが、外交手腕で国内がまとまるわけではない。またフランスにならった軍制改革は、人材不足と財政難で行き詰まってしまう。大久保と西郷が倒幕の方向で藩内をまとめようとしていたころ、慶喜もまた内政固めに難儀していたのである。

水戸藩には、慶喜に反対する勢力がなお根強い。開国を打ち出したことで、反感を強めた者もいたことだろう。なにしろ、慶喜には説明能力が欠けている。本人の中では、何ら矛盾のない行動も、はたから見れば支離滅裂のように見えてしまう。

諸外国との対応に活路を見出しているうちに、当初はあれだけこだわった長州征伐も、ちっぽけなことに思えてきたらしい。どうも積極的に解決しようという、姿勢が見られない。

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