シンガポールは人口531万人(日本の約4%。以下とも2012年)、GDP2765億ドル(日本の約5%)、面積は716㎡(東京23区と同程度)の都市国家であり、IRの目的はビジネス、観光両面の振興です。
実際、シンガポールのインバウンド観光客数は2009年には968万人でしたが、2013年には1550万人まで拡大しました。また、年間観光収入は2009年には126億シンガポールドルから、2013年には235億シンガポールドルまで拡大しました。ちなみに、2013年の年間観光収入はGDPの約7%を占めました。シンガポール政府は中期目標として2015年に観光客数1700万人、観光収入300億シンガポールドルの達成を掲げています。それが達成できるかどうか注目されます。
IRの経済効果は、観光収入の拡大に加えて、設備投資、雇用増加、その波及効果など多岐にわたります。2つのIRの直接雇用は2.6万人(マリーナベイサンズ1.2万人、リゾートワールドセントーサ1.4万人。店舗、ユニバーサルスタジオの従業員を含む)に達しました。
カジノを外資に任せた数少ない事例
世界のカジノ市場における、シンガポールの特徴は、施設数を2つに限定、ノンゲーミング施設を重視(カジノ色を希薄化)して統合リゾート化を徹底、都市計画全体の中でIRを位置付けた、などです。日本はシンガポールから学ぶべきものは多くあります。上記の3つの特徴は日本でも重視される方向です。
ただし、政策目的には大きく異なる点があります。シンガポールの目的は、インバウンド観光の促進、都市競争力の向上でした。日本のIRの政策目的は、それらに加えて、日本の文化や産業の魅力の発信、すなわちクールジャパンの推進に重点を置きます。
日本のIRは施設コンテンツ、超過収益がクールジャパンに貢献することが強く求められます。シンガポールは都市国家という特殊な環境下にあり、みずからをアジアと欧米のハブと位置づけ、アジア、米国の事業者にIRを任せました。シンガポールは世界の先進国の中で、カジノを外国企業に依存したほぼ唯一の例です。日本は世界第3位の経済規模、世界トップクラスの産業層、長い歴史が形成した独自文化があります。おのずから日本が目指すIRはシンガポールとは異なってくるはずです。
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