2つのIRのうち、「マリーナベイサンズ」は商業ビジネスの中心に近い港湾エリアに位置します。一方、「リゾートワールドセントーサ」はリゾート地区として開発が続けられてきたセントーサ島に位置します。セントーサ島も商業ビジネスの中心部から車で5分ほどであり、両者は近接しています。
マリーナベイサンズは米国のラスベガスサンズ社の100%子会社が所有、運営しています。一方、リゾートワールドセントーサはマレーシア資本のゲンティンシンガポール社が所有、運営しています。
2件とも全体の施設構成や規模感は類似しており、基本コンポーネントは、カジノフロア(15000㎡)、ホテル(2000室前後)、MICE(展示スペース、会議室)、ショッピング、飲食などです。2つのIRの大きな違いは、施設コンセプト、顧客ターゲットです。マリーナベイサンズはMICE施設(会議場、展示施設)、ショッピング、飲食に重点を置き、大人向け、都会的なイメージです。一方、リゾートワールドセントーサはリゾート島であり、ユニバーサルスタジオをフィーチャーしており、ファミリー向け、リゾートのイメージです。
2つ合わせて2000億円の営業利益
業績数値をみると、それぞれ売上高は3000億円前後、営業利益は1000億円前後。カジノ事業の収益性を決定する要素は、対象マーケットの個人金融資産量、施設数です。この事業の唯一の収支リスクは過当競争、つまり施設の供給過多です。
シンガポールの対象マーケットは、アセアン全域に広がっており、大きな経済圏です。一方、アセアン内のIR、カジノ施設の供給量は現時点では多くありません。この結果、高い収益性が確保できるわけです。
当面、両IRの業績は安定的に推移する見通しです。アセアンの経済と個人金融資産は高い成長が続く見通しなのに加え、シンガポール政府は両施設へのカジノライセンス発行後、10年の間(おおむね、2020年まで)は追加ライセンスを発行しないことを公約しているためです。
アセアン全体に目を向けると、フィリピンなどで新しいIRの開発計画が進んでおり中期的に競争が激化するでしょうが、経済成長に伴う市場拡大で吸収できる見通しです。
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