年収は働く街で決まっていた! IT長者は職住近接が常識?

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渋谷のITベンチャーは、社員の住む家も渋谷周辺に求めている。ブログサービスなどを提供するサイバーエージェントは、勤務先から2駅圏内に住む社員の家賃を補助する「2駅ルール」をつくった。社員専用のシェアハウスを渋谷に設け、近隣に住むことを勧める。別のIT系企業も、通勤手当より安いからと、会社近くに住む社員に「渋谷手当」なる家賃補助を支給する。

吉野家、都内で時給に差

ランサーズで働く上野諒一さん(25)は昨年、北海道から上京した。大学院在学中にプログラミング技術を身に着けたが、北海道には生かす場が見つからなかった。いまは「移動時間がもったいない」と、会社から約2キロの場所に住んでいる。
「エンジニア同士の勉強会や、ベンチャーに入社した仲間とのランチなど、昼も夜も渋谷で過ごしています。おかげで、電車に乗る習慣がなくなりました」

将来有望な産業が、徒歩圏内で成長する。こうした現象が進んでいくとどうなるのか。

エンリコ・モレッティ著『年収は「住むところ」で決まる』(池村千秋訳、プレジデント社)の解説者、大阪大学経済学部の安田洋祐准教授は、その点について、こう指摘する。

「同じ職業であっても、住む場所によって給与は違います。一般的には、家賃などのコストが違うからと言われていますが、それだけではない。主要産業の違いも大きな要因なのです」

つまり、ITのような付加価値の高い産業が発達した地域では、そうではない産業が中心の地域よりも、相対的に給与水準が高いというのだ。末尾の「給与と労働時間の格差」の表は、東京都を100とした場合の平均給与水準を、都道府県ごとに並べたものだが、なんとなくそうした傾向が見て取れるのではないか。

同じ都内でも、給与水準の格差を見ることができる。吉野家の渋谷109前店の募集時給は、7月15日現在で1200円。一方、渋谷から電車で約40分の国分寺北口店は900円。実に1.3倍の違いがある。

エンジニアを囲い込み

転職サイトを運営するエン・ジャパンによると、IT産業従事者の平均年収は、この5年で約50万円上がった。需要に比べて、国内にいるエンジニアの絶対数が足りず、データ分析、ゲームやアプリの開発ができるエンジニアを、企業が年収を大幅に引き上げて引き留めようとしているという。

イノベーションを起こす可能性を秘めたエンジニアを、あの手この手で囲い込む構図は、シリコンバレーと同じ。この地に本社を置く大手IT企業には、さまざまな種類のキーボードやマウスをそろえた自販機があり、エンジニアは自分に合うものを無料で選べる。エグゼクティブ層の転職を支援するビズリーチ(本社・渋谷)の新規事業担当、森山大朗さん(35)は言う。

「シリコンバレーのイノベーションは、エンジニアの創造性から生まれる。だから企業は、福利厚生を充実させるなどして引き抜きを防いでいます。現地のエンジニアの平均年収は1200万円、という話もある」

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