日本のワクチン支援の裏で政争が起きていた台湾

中国製ワクチンを入れたい野党が政権を攻撃していた!

客室の窓を使い「平安」とライトアップした台北市内のホテル。新型コロナウイルス感染者の急増で内政が混乱している(写真・2021 Bloomberg Finance LP)

6月4日、日本から台湾へアストラゼネカ製ワクチン124万回分が無償提供された。現地では日本や日本人への感謝が鳴りやまず、蔡英文総統も日本語で感謝のツイートをトップに固定するなど、国全体が謝意を表明している。

しかし、これが実現する前の、5月28日、台湾中央感染症指揮センター(台湾CDC)指揮官の陳時中・衛生福利部長(厚生相)が、日本政府が自国のアストラゼネカ製ワクチンを提供する用意があるとの報道に対し、「もちろん歓迎する」と述べつつ、「時期は早いほうがいい」とも付け加えた。感染が急拡大している中、1本でも多くのワクチンを確保したい。そんな指揮官としての本音が出た一方、ワクチンが政治の駆け引き材料となり、政府と野党間の熾烈なやり取りがあらわになった。

国民党「中国から輸入せよ」と政権批判

台湾では感染が抑えられていたこともあり、国民の間でワクチン接種への関心が高くなかったが、5月の感染拡大以降、急速に高まり、ワクチンに関するニュースが連日報じられるようになった。

そんな中、野党の中国国民党(国民党)が、中国製ワクチンの受け入れ攻勢を強めていった。感染が抑えられていた4月頃まで、「アストラゼネカ製ワクチンは、血栓問題があるから接種を控えよう」程度だったが、「中国製ワクチンを受け入れよ」そして「とにかくワクチンをよこせ」とトーンを徐々に高めていった。

しかし、国民党もこれまでの経験から、国民の多くがメイド・イン・チャイナに拒否反応を示していることを熟知していた。ましてやワクチンは直接体内に入れる。最悪、命にかかわる。どうやって輸入に向けた世論作りをするのか、党内でさまざまなシミュレーションが行われていたという。そして、メディアに暴露されたのが、「中国製」とは言わず、ドイツ・ビオンテック社製と言うように、「中国」を明言しない同党の世論対策マニュアルの存在だった。

ビオンテック社では、中華圏の総代理店を中国の上海復星医薬としているため、ここを経由して購入する。その際、「中国」の名前は出さず、ビオンテック製とだけ人々に伝える。台湾CDCは直接ビオンテック社と売買交渉し契約直前に流れてしまっていた。のちに蔡総統が中国による購入妨害があったと発言した件だ。しかし、中国の代理店を通せば中国と国内に配慮した形で輸入できる。中国製ではないから問題はない。国民党関係者としてはうまくまとめたつもりだった。

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