日本のワクチン支援の裏で政争が起きていた台湾

中国製ワクチンを入れたい野党が政権を攻撃していた!

国際政治の枠組みから考えれば、今回の台湾へのワクチン提供に関する裏話で、国内の報道の通り、台湾側が数量よりもスピード重視で申し出ていた。その背景には、人命に関わる問題であるほか、上述のワクチンをめぐる国内・国際政治の駆け引き、そしてアメリカが主導する自由・民主主義国家へのコミットメントが表れていると考えられる。

ワクチンは確かに第一義的に人道問題であるが、政治問題であり、時限的な側面もある。つまり、いずれ解決し消失する問題だ。

行動監視に感染者への差別……問題も山積

台湾が本当に考えなければならないのは、新型コロナ対策の名の下に社会で発生してしまった問題を、今後どのように修復していくか、これこそが人権主義を掲げて政権を奪取した与党・民進党の最大の課題だろう。

たとえば、感染拡大の初期に台北の万華という古い町でクラスターが発生した。当地の風俗店を利用した顧客とともに、そこで働く女性や多くの外国人移民、ホームレスなどの社会的弱者への差別が横行し始めたのだ。

差別の広がりは当地のその他住民にも広がり、地元のフレディ・リム(林昶佐)議員は感染対策のほかに、差別撲滅のために奔走しているという。フレディ議員自身、議場へは他の議員よりも一番遅く入場し、一番早く退場するなど感染対策に気をつかっている。

また、万華の感染者やクラスターが発生した地域住民15万人の健康保険証にマーキングし追跡するなど、プライバシーを侵害する行為が明るみになった。非常事態の名の下に、政府が国民を監視下に置く、置けることを、民主化して20年以上経過した社会で改めて証明してしまったのだ。また、現在の中高年が戒厳令下で生まれ育ったこともあり、実は管理社会に慣れてしまい、違和感を覚えにくいという問題もあるようだ。

社会に生じたこのような亀裂をいかに修復し、再び国民を団結させられるのか。台湾のワクチン問題の先にある、もっと大きな問題こそ、民主主義国家・台湾が本気で解決しなければならない問題だろう。

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