しかし、直接メーカーと交渉できているのに、なぜわざわざ費用を上乗せさせられる代理店を経由しなければならないのか。また、3月24日、メディアが報じた代理店経由で香港やマカオに入ったワクチンに瑕疵(かし)が見つかり、ビオンテック社が回収を命じる報道が再び浮上したのである。中国の代理店から購入したことで品質保証やアフターサービスは担保できるのかなど、ワクチン輸入をめぐるさまざまな議論が飛び交った。だが、何より「国民党に欺かれた」と感じた世論の中国拒否はさらに高まったのだった。
このような野党側の攻勢に、政府も6月末には第2フェーズを終了した国産ワクチンが供給できる見通しであると繰り返しアナウンスするようになる。台湾CDCの発表によれば、アストラゼネカ製の治験者数は第1、第2フェーズで合わせて3220人、モデルナ製は660人、ビオンテック製は360人。これに対し、台湾の2社では、高端製は7667人、連亜製は7719人と圧倒的に多い。そして政府は国内2社とそれぞれ500万回分ずつ、計1000万回分の契約を結んだと発表した。
6月末に台湾製ワクチンが投入
今回、日本からのアストラゼネカ製ワクチン124万回分を除けば、5月28日時点で、台湾ではアストラゼネカ社に1000万回分(11.7万回分到着)、COVAX(ワクチンを共同購入し途上国などに分配する国際的な枠組み)に476万回分(60.96万回分到着)、モデルナ社に505万回分(15万回分到着)を注文済みだ。世界的なワクチン不足で到着は依然不透明だが、予定通りいけば6月末頃から着々と到着する。
今回、日本からの124万回分は台湾の全人口2300万から見れば少ないような感じを受けるが、そもそも輸入品だけで対応しようとしているわけではなく、6月末から7月までの空白期間に、医療従事者や高リスク層への確実な接種を行うためと理解できる。
国産ワクチンの開発動向を伝えるものとして、もっとも印象的だったのは、前副総統で医学者でもある陳建仁氏がテレビ番組のインタビューで、夫妻で国産ワクチンの治験に参加し、体調も良好と発言したことだった。
陳氏は副総統を退任したとはいえ、2002年のSARS(重症急性呼吸器症候群)流行を食い止めた功労者であり、人々が親しみを込めて「大仁哥」(人柄と、名前の仁のやさしさに掛けて「やさしいお兄ちゃん」)と呼ぶほど人気がある。そんな陳氏夫妻が国産ワクチンを接種し経過も良好なことで、人々への訴求力はさらに高まった。
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