ザラ、メキシコ政府に「文化の盗用」指摘された訳 民族衣装の利用に対して説明を求める書簡

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ザラに限らず、ファストファッションブランドが、デザインの盗用を指摘されるのはこれが初めてではない。過去には、イヴ・サンローラン氏に長く仕えたピエール・ベルジェ氏は、「ファストファッションに創作は必要ない。市場にあるものを真似て、安く提供するだけでいい。あとはマーケティングの力だけである」と語っている。

実ザラなどの母体であるインディテックスには300人のデザイナーがおり、8つのブランドのために毎年1万8000着の新作を生みだしている。ライバルのH&Mやギャップは年間4000着だとされている。

つまりインディテックスの旗艦ブランドであるザラが、1年間で市場に出すアイテムの数は膨大。それをこなすには、消費者が興味を引かれる商品を生み出し続けなければならい。

ネットでデザインの盗用もわかりやすくなった

盗用を指摘するデザイナーも少なくない。2016年にはアメリカ・ロサンゼルス在住のアーティストが、自身のデザインがザラに使われていると、自身のデザインとザラの商品の写真を並べてインスタグラムに投稿。これに多くのデザイナーやアーティストが反応した。また、キューバで生まれた零細企業の作品が模写された、という訴えもある。

アパレル企業やファッションブランドが意図的に盗用した意図がないとしても、盗用された側は別の感情を抱くだろう。イギリスのガーディアン紙は、特にメキシコの民族衣装はそのデザイン性の高さなどから、長い間さまざまなメーカーから類似商品が出るなど、盗用の温床となっている。

もっとも、同紙によると、アパレル企業側は先住民側が知的財産権をめぐる訴訟でも起こさないかぎり、盗用などを認める可能性は低い。ほとんどの先住民族コミュニティは貧困にあえいでおり、訴訟費用をまかなうことは不可能だとされる。今回のメキシコ文化省による訴えは、アパレル企業にどこまで響くだろうか。

白石 和幸 貿易コンサルタント

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しらいし かずゆき / Kazuyuki Shiraishi

1951年生まれ、広島市出身。スペイン・バレンシア在住40年。商社設立を経て貿易コンサルタントに転身。国際政治外交研究も手掛ける。著書に『1万km離れて観た日本』(文芸社)。

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