ザラ、メキシコ政府に「文化の盗用」指摘された訳 民族衣装の利用に対して説明を求める書簡
メキシコ文化省は5月末、アパレル大手3社、スペインのザラとアメリカのアンソロポロジー、およびパトール対して、メキシコ・オアハカ州の先住民族の民族衣装のデザインを利用していることが「文化の盗用」に当たるとして、「何の根拠があって共通財産を使って利益を得ているのか、公的な説明を求める」書簡を送ったことを明らかにした。
同省は、ホームページ上で各社に送った書簡を「公開」。そこには、各社のどのアイテムが文化の盗用に当たるかわかるように、”元”となっている民族衣装の写真と並べて掲載。例えば、ザラについてはオアハカの女性が着る刺繍の入った民族衣装「ウイピル(Huipil)」のデザインに類似していると指摘している。
同省によると、ウイピルはこの地域の女性のアイデンティティーの一部であり、刺繍は環境や歴史、コミュニティを示すシンボルが表現されている。衣装は素材から手作りで、仕上げるのには1カ月以上の手仕事を要する。この技は世代を超えて伝えられており、民族衣装の販売は多くの先住民族コミュニティの生計を支える1つとなっている。
利益の一部はデザイン所有者に還元されるべき
こうした背景があるにもかかわらず、それをアパレル大手が容易に、しかも事前の許可なく模写して生産するということに対して、文化省は不満を訴えているわけだ。
2018年12月にアンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール氏(アムロ)がメキシコ大統領に就任して以来、同社会で差別されている人たちへの配慮を政治活動の重点の1つとして挙げている。
こうした中、メキシコに数多く存在する民族の文化などを守ることにも関心を払っており、大手3社の文化の盗用を訴える背景には、アパレル各社が民族衣装の盗用から得た利益の一部は、デザインの元となっている先住民族に還元されるべきだとの考えがある。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら