そうした微妙な立ち位置も見計らいつつ、ひとまず年内は、地域医療ビジョンの策定をにらんだ作業が中心となってこよう。それ1つとっても、今後のわが国の社会保障をめぐっては軽視できないものである。早速、社会保障制度改革推進本部の下に、「医療・介護情報の活用による改革の推進に関する専門調査会」を設置して、地域横断的な医療・介護情報の活用方策などを検討することから始めることとなっている。
専門調査会での討論は、医療費適正化の重要なステップ
「医療・介護情報の活用方策」と抽象的に言われても、何のことかわからないだろう。専門調査会の名前は抽象的だが、ミッションははっきりしている。それは、社会保障改革プログラム法で方向性が示され、今年の通常国会で成立した地域医療・介護総合確保推進法に盛り込まれたものだが、地域における効率的かつ効果的な医療提供体制の確保のための体制整備に必要な情報整理と分析である。
地域医療・介護総合確保推進法では、医療機関が病床機能(高度急性期、急性期、回復期、慢性期)を都道府県に報告する仕組みである、病床機能報告制度を設けることが決まった。そして、この制度を基に、地域医療構想(ビジョン)を都道府県が策定することになっている。予定では、今年度中に、都道府県が地域医療ビジョンを策定するために必要なガイドラインを策定し、ガイドラインを踏まえ来年度に都道府県が地域医療ビジョンを策定することとなっている。
地域医療ビジョンでは、病床の機能分化・連携を進めるなど、医療提供体制改革を行うことを目指すとともに、過剰な医療機能への転換の中止要請、稼働していない病床の削減要請、要請に従わない医療機関の管理者の変更など、強化された都道府県の権限で、医療費を適正化することが期待されている。したがって、この専門調査会は、この予定をにらんでの作業を進めることとなろう。
地域医療ビジョンがより有効に策定されれば、患者のニーズと医療機関の体制のミスマッチを減らして、都道府県間で1人当たり医療費が高い県と低い県が顕著にある現状を改めて、医療の質を保ちながら医療費の負担を適正にすることが可能である。2025年を見据えて的確な一歩を踏み出せるかどうかがかかっている。
※ 本稿において意見にわたる部分は、あくまで筆者の個人的見解であり、筆者が関わる組織や会議等を代表するものではない。
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