別の言い方をすれば、社会保障改革プログラム法自体は、消費税率を10%に引き上げることを規定した法律ではない。しかし、社会保障改革プログラム法は、消費税率を10%に引き上げることを想定して、子ども子育て、医療、介護、年金の各分野で必要な制度改革の進め方を規定したものである。そして、その社会保障改革プログラム法によって、社会保障制度改革推進会議の設置が根拠づけられている。
2025年見据え、横断的視点で社会保障制度改革を議論
要するに、社会保障制度改革推進会議には、ポスト「一体改革」を意識した議論を託されたものといえよう。したがって、社会保障制度改革推進会議は、消費税率を10%に上げるか否かを決める機関ではないものの、消費税率を10%に引き上げることを想定して企画された社会保障改革について進捗状況を確認し、さらにその後2025年を見据えたわが国の社会保障制度のあり方を、5年以内に打ち出すことを目指している。
では、社会保障制度改革推進会議は、当面どこに焦点を当てて議論するのか。社会保障に関する有識者会議は、厚生労働大臣の諮問機関である社会保障審議会があり、そこではより専門的に各分野の具体策について議論する場が設けられている。さらに、医療では、健康保険制度や診療報酬の改定などについて審議する中央社会保険医療協議会がある。社会保障制度改革推進会議は、社会保障審議会や中央社会保険医療協議会などと対抗する形で議論する場ではない。むしろ、社会保障制度の分野横断的な内容を扱うのに向いている。
その観点から言えば、他の会議体では扱いにくい内容で分野横断的なものとして、基礎年金の給付水準と生活保護給付の水準の調整や、医療と介護のより包括的な連携、社会保障給付と税制との関係などが考えられよう。
とはいえ、政権として消費税率を10%に引き上げることを最終判断していない以上、今夏以降の年内において、それが前提になるような社会保障制度の具体策を、社会保障制度改革推進会議で議論するのはなじみにくいだろう。この会議の直接的な担当である、甘利明・社会保障・税一体改革担当大臣は、目下の景況をにらむ経済財政政策担当大臣でもある。社会保障制度改革推進会議議長に就任した清家篤慶応義塾長は、第1回会合後の記者会見で、まだ消費税10%も本決まりでなく、まずは10%を前提とした制度の成り行きを注視するとの旨を述べている。
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