「北朝鮮の強制収容所」3Dアニメで描かれた"現実" 映画「トゥルーノース」が担う啓発的な役割

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3Dアニメで北朝鮮を描いた映画『トゥルーノース』 ©2020 sumimasen

1年以上もの長い間、世界中の人たちの関心の的が新型コロナ感染症関連の話題となり、その他のニュースに触れる機会が極端に減っている。かつては毎日のように報道されていた北朝鮮に関するニュースも大幅に減少し、多くの人にとってますます縁遠い国になりつつある。

そうした〝空白地帯〟に波紋を投げかけるかのように、北朝鮮の政治犯強制収容所の実態を3Dアニメで描いた『トゥルーノース』の上映が始まった。

北朝鮮の権力者が見せつける無慈悲さ

この世界はもとより不公平で、理不尽さに満ちている。人はこれを覆すことはできない――。かれこそ20年近く前から、筆者は北朝鮮にまつわる物事に興味を抱いてきた。2000年代前半、北朝鮮から中国に逃れてきた脱北者の救援に活動家として深く関わるようになると、救援活動中に中国で逮捕され、不法入国者輸送罪で懲役8カ月の刑罰を受けるなどの経験もしている。

そうした活動を通じ、北朝鮮という国やそこに住む人々が置かれた境遇について知れば知るほど、国家が持ちうる強大な権力の無慈悲さと、その対極に位置する個人の非力さを嫌というほど見せつけられてきた。「この世界は不公平で理不尽である」という思いは、北朝鮮から逃れてきた人たちと接する中で何度も実感させられ、以来、否定しがたい〝真理〟として心の奥に刻まれている。

では、本題に入ろう。本作『トゥルーノース』は、金正日体制下の北朝鮮の首都ピョンヤンを舞台として始まる。在日朝鮮人の帰還事業で北朝鮮に渡った両親と暮らす幼い兄妹のヨハンとミヒは、質素ながらも平穏な日々を送っていた。

ところがある日、かねて北朝鮮の状況に不満を抱いていた父親が政治犯の疑いで逮捕されると、彼らの人生は一気に暗転していく。明確な説明もないまま、連座制によって母子たちは強制収容所に連行されてしまうのだ。そして、そこで待っていたのは、この世の地獄のような生活だった。

次ページ変わらない「北朝鮮の物語」
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