Omiaiの「個人情報流出」が深刻化した根本原因 安心安全で差別化していたはずが本末転倒に

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他サービスに比べセキュリティ上のリスクが高いにもかかわらず、オミアイがクレカ登録や外部委託などの方法を採らず、取得データを長期にわたって保管してきたのにも理由がある。

マッチングアプリ利用者の中には、マルチ商法への勧誘や詐欺行為を働く者も一定数存在する。自社で身分証明書を集める手法は、クレカでの確認などよりも、そうした悪質ユーザーの入会抑制や、違反行為を行なったユーザーの再登録拒否など、アプリの健全化を図る一手になる。

実際、ネットマーケティングも個人情報の利用について、年齢確認に加え「利用規約違反等が疑われる場合の事実関係調査や、違反行為により強制退会者の再登録の防止、事件性を伴うトラブルが発生した場合の警察からの問い合わせ対応等」(同社広報)があったと説明する。

成長への目算が狂ってしまった

同社のそうした姿勢は、年齢確認を行う際、書類の一部を隠すことを許容するかどうかといった点にも表れている。

本来、年齢確認に顔写真は必要ない。そのため一部サービスでは、運転免許証等のデータをアップロードする際、顔写真の部分にテープを貼るなどして隠すことを許容していた。だた、オミアイでは「(書類の一部を隠す)マスキングにもさまざまな手法があり、いったん認めてしまうと偽造や改ざんの判定や管理が困難になる」(広報)として、禁止している。

年齢確認の簡便性などよりも、真剣な出会いの場として活用しようとするユーザーの安心・安全を重視する。それ自体は他サービスと差別化するうえで選びうる一つの道だろう。ただし、情報の管理体制が甘ければ本末転倒。ひとたび今回のような情報流出が起きれば利用者の信頼は失われ、取り返しのつかないダメージを負う。

広告事業から出発したネットマーケティングだが、近年はオミアイ(メディア事業)の拡大を成長の柱としてきた。今回の事件で、その目算は大きく狂ってしまっただろう。信頼回復の道のりは険しい。

東洋経済プラスの連載「サイバーセキュリティの大問題」では、以下の記事を無料でお読みいただけます。

もしも「あなたの企業」が攻撃を受けたら

日本企業のあまりに劣る「セキュリティ戦略」

「あの情報流出事件」に学ぶ教訓

井上 昌也 東洋経済 記者

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いのうえ まさや / Masaya Inoue

慶應義塾大学法学部政治学科卒業、同大メディア・コミュニケーション研究所修了。2019年東洋経済新報社に入社。現在はテレビ業界や動画配信、エンタメなどを担当。趣味は演劇鑑賞、スポーツ観戦。

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