ボルヴィックだけじゃない!日本の水源枯渇危機 いったん枯渇すると復活するには時間がかかる

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アメリカ・フロリダ州にゼフィヒルという清らかな水が湧き出す場所があった。土地所有者が大手飲料メーカーと販売契約を結び、メーカーは1日数十万リットルの水をくみ上げ、地主には約2万ドルが支払われた。水源周辺に住む人々は、それまで自由に利用できた水が独占されたことに腹を立てたが、問題はもっと深刻だった。

大量の水をくみ上げたため、地下水の下流域で水不足や地盤沈下が発生。住民は企業に抗議し、くみ上げ中止を求めたが、企業は地下水のくみ上げと下流域での水不足や地盤沈下との関係はないと主張した。

この事例は2つのことを教えてくれる。法律では、「地下水は土地に付属する動産」と見なす国が多い。すると「土地所有=水所有者」ということになる。また、河川など表流水と異なり、地下水はどこを、どう流れているか見えない。それゆえ水のくみ上げと枯渇や地盤沈下などの因果関係を証明することが難しい。

「ミネラルウォーター税」が検討されたことも

2005年、山梨県で「ミネラルウォーターに関する税」が検討されたことがあった。同県で操業する飲料メーカーに対し、地下水利用1リットル当たり0・5円課税するというものだ。

山梨県は、ボトル水生産が155万1605キロリットルと全国生産量の40.4%を占めるボトル水の特産地だ(一般社団法人日本ミネラルウォーター協会「都道府県別生産数量の推移」2020年)。だが、地下水そのものはコストがかからない。もちろんくみ上げやボトリングなどに経費はかかるが、メーカーは自然界に存在する水を無料で使って利益を得ている。

ボルヴィックのボトルに貼られていた水の説明(写真:筆者提供)

そうしたことから課税を考えたのだが、飲料メーカーは反発した。地下水を使っている企業はほかにもあり、飲料メーカーにだけ課税というのは納得できないという理由だった。

協議会を作るケースもある。山梨県北杜市白州町は日本有数の水どころで、10社以上の大手飲料メーカーが地下水をくみ上げている。それぞれ自社の所有地で水をくみ上げているので法律上は問題ないが、大量に取水されるため、住民は地下水の枯渇や地盤沈下を懸念する。そのため地元自治体は飲料メーカーと協議会を設立し、無秩序な事業拡張の防止を申し合わせするとともに地下水位の観察を続けている。

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