日テレ一強の決算にみるテレビ戦略の致命的ミス 放送産業の大きなパラダイムシフトをひもとく

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今度は、減少額に絞ったグラフを見てもらいたい。

(筆者作成)

グラフから、どの局も一様に下げたのではないことがはっきりわかるだろう。元の大きさから言って日本テレビが一番減少額が大きそうなものだが、フジテレビが最も下げた。次はテレビ朝日だ。その次が日本テレビで、TBSの減少額はほかに比べて少なく済んでいる。

先述のとおり、放送収入の減少傾向はコロナ禍の前から起こっていた。そこで2期分の減少額を合計したグラフも作成したので見てもらいたい。

(筆者作成)

今度はテレビ朝日がいちばん減少している。次がフジテレビでその次が日本テレビ、TBSがやはり減少額が小さく済んでいる。

これは視聴率と必ずしも相関しない。ここ数年間かけて、CMセールスの指標となる視聴率は世帯から個人にシフトしたが、各局の減少額はそのどちらともリンクはしてない。私は、結局は「若者の視聴率」に関係していると見ている。

「若者の視聴率」獲得に向けた動き

テレビ朝日は世帯視聴率で日本テレビに肉薄してきたが、実はその中身は高齢層の視聴率だった。日本テレビは早くから「コア視聴率」を社内の指標に掲げて49歳以下の視聴率を取る努力をして、成果が出ていた。指標が世帯から個人に変わってもトップを維持している。

TBSも数年前から「ファミリーコア視聴率」を内部的に指標にしはじめた。フジテレビはこうした動きに出遅れていた。テレビ朝日はむしろ、世帯視聴率で日本テレビを抜くことに最近まで躍起になっていた。去年の後半から慌てて若者シフトに急転回したようだ。

スポンサーはずいぶん前から若者にCMを向けたいと意思表示していた。だがテレビCMが長らく売り手市場だったせいか、テレビ局はそれらスポンサーの声にあまり対応していなかったようだ。

それが数年前からスポンサー企業がテレビ広告を手控えるようになり、テレビ局側もやっと指標を世帯から個人に変えたところにコロナ禍がやってきた。その結果、新指標の打ち出しができていた局と慌てて今になって対応している局の差が、上のグラフに出ているのではないか。

大きなパラダイムシフトがテレビという産業に起こっている。

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