社長追放でも残る セイコー名誉会長の影


 ようやく新経営陣が発表されたのは5月11日である。改革派とされるセイコーインスツル社長の新保雅文氏や前内閣府委員など社外からの招聘を含め、従来よりも4人増の10人体制を敷いた。代表取締役に昇格した中村吉伸専務は「ガバナンス体制をしっかり作る」と決意を語る。

が、いまだ釈然としないのは、禮次郎氏の位置づけだ。

今回、会社側は禮次郎氏、村野氏、鵜浦氏の3人を名指しし、不透明経営に陥った経緯を説明した。それでも禮次郎氏を名誉会長に据え置くという判断では、従業員や取引先、投資家らの不信感を拭えない。

ちなみに同じ創業家出身の真二氏も、HD株約1100万株(6・1%)を持つ大株主である。資本と経営の分離の重要性を理解していないはずがない。本誌の取材には、「(禮次郎氏には)名誉会長を退いてもらう選択肢もある。誠意を持って話すしかない」(真二氏)と応じた。

セイコーHDは前期、7年ぶりに無配転落。自己資本比率8%台と脆弱な財務状態で、準備金を取り崩して繰越赤字を解消する。グループ3社も債務超過で、喫緊の立て直しが必要だ。第10代社長の真二氏は禮次郎氏の“院政”を断ち切り、真に開かれた企業に脱皮させられるか。老舗の名門企業は、今まさにその瀬戸際に立っている。

■セイコーホールディングスの業績予想、会社概要はこちら


(前野裕香 撮影:尾形文繁 =週刊東洋経済2010年5月22日号)

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