社長追放でも残る セイコー名誉会長の影

ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小


無条件服従だった前社長 緊急動議に驚く禮次郎氏

取締役会後の同日午後5時半には、都内でセイコーHDの緊急記者会見が開催された。

会見の主題は二つ。まず、会長兼社長の村野氏を解任し、後任の社長に創業家一族で副社長の真二氏を充てる人事だ。村野氏は鵜浦取締役とともに非常勤に降格となった。

真二氏は村野氏の解任理由をこう説明した。「(名誉会長である)禮次郎氏と、その腹心ともいうべき鵜浦氏の意向に、ただただ無条件に服従しているとしか思えない言動が続き、取締役会が果たすべき判断に支障を来した」。

続いて、債務超過に陥っている子会社・和光についても、会長兼社長の禮次郎氏と、専務の鵜浦氏の解任を発表。「彼らは山積する経営課題を放置してきた。和光を中心とする鵜浦氏のパワーハラスメントを見逃すことはできない」(真二氏)と断じたのである。

非常勤取締役に降格された村野氏、鵜浦氏は6月の株主総会をもって退任予定だったが、両者とも5月10日付で辞任を申し出、受理された。兼務していた子会社の取締役もすべて退いた。

一方で、禮次郎氏の処遇は温存された。子会社の相談役は退くものの、「経営には関与しない」(真二氏)との前提で、「名誉会長」の肩書は残すというのだ。

実は緊急動議の直後、真二氏は原田氏らとともに、禮次郎氏を訪ねている。「突然のことで申し訳なく断腸の思いだ」と真二氏は切り出した。これに禮次郎氏は驚いていたという。「だが鵜浦氏のパワハラを放置すれば、民事・刑事訴訟に発展する可能性が高く、130年の歴史を持つブランドを傷つける。私自身は名誉会長を救いたかったが、お救いできなかった」(真二氏)。


関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事