親の呪縛で結婚にも踏み出せず「宗教2世」の苦悩 両親が信仰熱心でも子どもがそうとは限らない
中学生になるとAさんは部活動と勉強で忙しくなり、日曜日の礼拝からも離れていった。ただ、長年「恋愛禁止」と教え込まれていたため、人を好きになることには抵抗があった。
恋愛に発展しないように、わざと男の子っぽく振る舞った。それが誰かと交際することを避けるAさんなりの手段だった。
「今ではありえないことですが、先生がクラスの男女の人数を数えるときに、私のことは『あ、お前は女だったか。あはは』とわざと間違ってカウントしたんですね。そのときに、『これだ』と思いました。こういうキャラでいたら彼氏の話にもならないし、恋愛の話から抜けられる。そうすることで自分の中で折り合いをつけて、生きやすくしていました」
このように生活を規制されていたが、両親は2世であるということだけで「あなたは神の子だから素晴らしい」と手放しで褒めた。なんだか居心地が悪かった。
「自分は何もしていないし、そんなに言われてもなぁと思っていました。すごい厳しく規制されているのに、都合よく褒められている。大人の言葉の端々から、モヤモヤや気持ち悪さを感じていました」
中高時代は「どうやって止めようかな」とばかり考えていたが、母は忙しい中でも年に1度の泊まり込みの合宿だけは行くように言った。Aさんが「絶対嫌だ」と拒否すると、母は大声で怒鳴り散らした。
行事に行く行かないで喧嘩になると、毎回「あなたを産んだ意味がない」「なんのために産んだのか」と決め台詞のように言われた。母の気を収めるためには、毎回「これで最後にする」と言ってしぶしぶ参加するしかなかった。
結婚に踏み切れず
その後、Aさんは大学に進学し親元を離れた。それまでも強い姿勢で拒否していたAさんに対し、母がなにか誘ってくることはなくなった。ただ、これまでの交際相手には「いつも後ろめたい気持ちがあった」と話す。
「結婚するときになれば親は大騒ぎするから、相手に一生迷惑をかけます。たとえ相手が納得したとしても、巻き込んで嫌な気持ちをさせたくないんです。どうせ結婚しないのに、付き合っているなんてだましているような感覚になりました」
Aさんも結婚を考える年齢にさしかかり、より真剣に結婚について思い悩むようになった。今の交際相手に「宗教2世」であることを打ち明けると、「そんな人が本当にいるんだね」と驚かれたが「嫌悪感はないし何でも協力するから相談して」と言われた。
ただ、Aさんは「私じゃない人と一緒にいたほうがいいし、自分に関わったら不幸になる」という思いがなかなか拭えないでいる。もし仮に結婚となった場合、また母からの過干渉が始まる可能性があるためだ。
「もし結婚を伝えたら、まず絶対に賛成はされず、否定的な言葉を言われ続けると思います。それでも結婚するならば、せめて宗教の信者にさせて、教えにのっとった結婚の儀式をさせようとするでしょう」