世界に逆行!音楽CDが売れる「K-POP」の驚く進化 人気のBTS、BLACKPINKも含めて見られる方向性

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CDをうれしそうに何枚も購入するファンを見ていると、サイン会に応募するため以上の何かがあることに気づく。K-POPのCDはとりわけ「開けて楽しむ」ことにフォーカスされているのだ。同じグループのCDでも、シールを剝がしたり、上蓋を開けたり、スリーブを外したりと、開封の仕方に毎回驚きがある。ランダムに封入されるグッズもCDのどこに挟まっているか

予想もつかず、サプライズポイントが1枚の中に何か所も用意されているのだ。いま世界的にメガヒットしている「サプライズトイ」のように、中に何が入っているか開けるまでわからないわくわくどきどき感が、K-POPのCDを開封するときの大きな楽しみでもある。実際にファンたちはそれらの「開封動画(Unboxing)」を多数投稿していて、SNSを通じてその高揚感を共有している。

デザインが世界的にも評価されている

『K-POPはなぜ世界を熱くするのか』(朝日出版社)
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サブスク時代における「音楽ソフトを所有すること」に対して、K-POPのCDはデザインや形態、仕組みなど、さまざまな方向から新たな価値と体験を提示している。

そうしたモノとしての価値が認められるのも当然の成り行きで、2020年にはBTSの連作アルバム『LOVE YOURSELF』が世界的に権威ある「レッドドット・デザインアワード」3部門のうちのコミュニケーションデザイン部門で受賞したのは象徴的だ(同作品は2018年のグラミー賞で「ベスト・レコーディングパッケージ部門」にもノミネートされている)。

3枚のアルバムのデザインは、テーマの「自己愛」を花が咲いて散る過程にたとえ、有機的な線で表現した。過去にはSMやYGアーティストのCDパッケージも世界三大デザインアワードで受賞している。

切磋琢磨を重ね、わずか10年でCDパッケージをここまで進化させてきた韓国のデザイナーたちの熱量とスピード感には脱帽するしかない。今後さらにCDのグッズ化が加速し、付録がメインのファッション雑誌のようになってしまったら残念だが、パッケージの核にアイドルの揺るぎないコンセプトがあるかぎり、まだまだ進化の伸びしろはあると思う。

いまアイドルやダンサーになりたくて若者たちが続々と韓国へ学びに向かっているように、今後は韓国にデザイン留学する人も増えていくのではないだろうか、なんて、K-POPのCDを眺めながら感じている。

田中 絵里菜(Erinam) デザイナー、ライター

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たなか えりな / Erina Tanaka

1989年生まれ。日本でグラフィックデザイナーとして勤務したのち、K-POPのクリエイティブに感銘を受け、2015年に単身渡韓。最低限の日常会話だけ学び、すぐに韓国の雑誌社にてデザイン・編集担当として働き始める。並行して日本と韓国のメディアで、撮影コーディネートや執筆を始める。2020年に帰国してから、現在はフリーランスのデザイナーおよびライターとして活動。過去に『GINZA』『an·an』『Quick Japan』『ユリイカ』『TRANSIT』などで韓国カルチャーについてのコラムを執筆。韓国・日本に留まらず、現代のミレニアルズを惹きつけるクリエイティブやカルチャーについて制作•発信を続けている。 Instagram: @i.mannalo.you

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