MRIや血液検査でもわからなかった腰痛の「原因」 1年以上病院やマッサージに通っても改善せず

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「いいえ、けっしてそうではありません。たしかにFさんは痛みを感じていらっしゃるはずです。ただ、痛みを感じる脳が、心のストレスによって誤作動を起こしてしまうことがあるのです」

心因性の腰痛とはどういうものか、そしてFさんの腰痛も心因性のものである可能性が高いことを伝え、この時には、一度心療内科(精神科)に行ってカウンセリングを受けたほうがいいだろうと考えたので、腰痛の患者さんの診療実績のある心療内科の受診をおすすめしました。

ストレスの多い環境では腰痛が増える

ストレスと腰痛の関係は、最近とても注目されています。精神的なストレスを抱えていると腰痛を発症しやすく、かつ、腰痛が慢性化しやすくなることが、最近の研究で次々とわかってきたからです。

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たとえば、アメリカではこんな研究も行われています。被験者を2つのグループに分けて、一方のグループの人たちには否定的な言葉で責めて心理的なストレスを与え、もう一方のグループの人たちには肯定的な言葉で褒め、同じ量の物理的な負荷を腰椎に与えたらどうなるのかを調べたのです。

結果は、否定的な言葉で責められ心理的なストレスを与えられたグループのほうが、腰痛の発生率が高くなりました。なおかつ、内向型、直感型の性格の人が腰痛を発症しやすかったそうです。

つまり、ストレスの多い環境、ストレスを受けやすい性格の人のほうが腰痛を発症しやすかったのです。ということは、仕事や日常生活のなかで同じように腰に負担のかかる作業を行っていても、どんな環境かによって、腰痛になりやすいかどうかは変わるということ。ストレスの多い環境であれば、当然、腰痛は増えるということです。

池谷 敏郎 医学博士/池谷医院院長

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いけたに としろう / Toshiro Iketani

1962年、東京都生まれ。医療法人社団池谷医院院長。東京医科大学医学部卒業後、同大学病院第二内科に入局。1997年、医療法人社団池谷医院理事長兼院長に就任。専門は内科、循環器科。現在も臨床現場に立つ。生活習慣病、血管・心臓などの循環器系のエキスパートとして、数々のテレビ出演、雑誌・新聞への寄稿、講演など多方面で活躍中。東京医科大学循環器内科客員講師、日本内科学会認定総合内科専門医、日本循環器学会循環器専門医。著書に『体内の「炎症」を抑えると、病気にならない!』(三笠書房)、『「血管を鍛える」と超健康になる!』『血管の名医が教える15歳若返る習慣』(ともに知的生きかた文庫)などがある。

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