チャレンジとリピートの数字を一緒にするな

東芝機械の八木正幸取締役に聞く(後編)

三宅:以前、チャレンジと通常の営業のリピートの数字を一緒にするな、とおっしゃっていましたね。

八木:当社では、かつて営業が受注した金額を給料に反映させていましたが、私は大反対でした。なぜかというと、優秀な人間には、他社の牙城や、これから伸びる市場など、難しいところを担当させなければなりません。つまり、彼らは優秀であるからこそ、ほとんど注文がとれないのです。仮にやっとのことで注文をとってきても、工場はいつものお客様の儲かる案件を優先したがるから、ろくにやってもらえない。優秀な人間は苦労の連続なのですよ。それに対して、社長さんと飲んでいればリピートオーダーがくるところを担当している人間は、営業成績がどーんと上がります。それを同じ土俵で評価したらおかしいでしょう?

三宅:かつて、私が苦しんでいるとき、八木さんにそう言ってもらったのがうれしかったのを覚えています。それが食事中にメモをしていた最大の理由でした(笑)。

八木:だから私は、評価をみんな変えちゃったの(笑)。苦労している人間を評価しないと会社は活性化しません。

三宅:苦労をちゃんと評価するし、失敗しても責めないということですね。

八木:そのかわり、必ず前向きに倒れろと言っています。前向きに倒れればすぐに起き上がれるけど、後ろ向きに倒れたら、なかなか起き上がれない。マインドチェンジは難しいのです。

三宅:武田信玄を思い出しました。三方が原の戦いで、徳川家康の軍が信玄の騎馬隊に敗れてボロボロになっているとき、徳川方の兵がみんな前向きに倒れていたのを見た信玄が、「これは怖いぞ」と追撃をやめた、という話があります。それと同じですね。

八木:そうそう。実は前向きに倒れたときが、いちばん力が出るのです。だから後ろ向きに倒れたやつは怒るけど、前向きに倒れているやつには怒らない。

5年後、10年後に足りないものを探す

三宅:ところで、八木さんは次々とアイデアが出てくる人だと聞きましたが、そのコツってありますか?

八木:繰り返しになってしまいますが、イノベーションをするときは、空間でポジショニングするようにしています。当然、経営的な側面もあるし、技術的な側面もある。いろいろな側面を、3次元で考えるのです。そしていつも5年後、10年後にどうあるだろう、というゴールを見て、そこから逆算するというイメージです。われわれ、機械メーカーができることは限られています。材料メーカー、お客様とタイアップしないといけないし、そのプロセスをインテグレートする人も必要です。リソースはないけれども、新しいものを提案して世界で勝負したい。そのときは、パートナーと組みます。

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