三宅:八木さんは率先して自らビジョンを語るタイプですね。
八木:そうですね。開発は短期、中期、長期に分けて、長期は大学とか産業技術総合研究所と一緒にやる。中期は開発課で先をにらんでやる。短期は日々のマイナーチェンジです。あとは人材のローテーションですね。みんな変化を嫌がるのですが、私は変化が大好きで(笑)、変化しないと飽きちゃうんです。変化を恐れず、楽しんでほしいのですよ。やはり経験を積ませないと。
三宅:普通の人は変化を嫌がりますが、それでもある程度、強制的にいろいろな経験をするようになると、変化が普通のことになってきますよね。
八木:そうそう。われわれが変化を後押ししないとね。私はビジョン、テーマを示して、あとは部下に任せるのです。みんなに経験してもらう。中には大失敗もあるんですよ。ひとつの案件で、私の事業部の期の利益が全部すっ飛んだこともありました。
三宅:大きなジャンプにトライしすぎたということでしょうか?
八木:もちろん事前検討はしましたが、それが甘かった。世界初の案件だったのです。しかし、大事なのはその失敗の後だと思いました。全員を集めて、「責任者を絶対に非難するな、こんなことでビビッて挑戦しなくなる風土がいちばん怖い」と言いました。
苦労している人間をきちんと評価する
三宅:いい話ですね。ところで、社員の方から八木さんの評判を聞いてみたら、「下を育てるのがうまく、あまり細かいことを言わず任せてくれる人だ」との評判でした。これもいい話ですね(笑)。
八木:誰でも10のうち1か2はいいところがある。そこを見て伸ばすように心掛けています。もちろん、人には欠点もありますが、細かいことを注意して小さな人間になるより、でかい人間になってほしい。だから、大きな失敗は困るから止めるけど、小さなことは言いません。管理職には、部下にあれやれ、これやれと言うなと教えています。
三宅:部下に指示するのはよくないということですか?
八木:自分の手足に使っているだけというのは、よくないです。手足人間がいっぱいできても、会社は絶対によくなりません。管理職のいちばん大事な仕事は、部下を育てることです。そのためには教えるのではなく、考えさせる。質問し、サジェスチョンを与えて、答えられなければ、翌朝までに考えてこさせる。
三宅:自分で考える人材を育てる、ということですね。
八木:そうです。手足人間が増えると、効率は一時上がるかもしれません。でも、それだと永続的な発展はできません。特にわれわれのような設備産業は成熟産業ですから、既存の設備の更新は微々たるものです。海外などの新しい地域、新しい分野で設備を拡大しているところにチャレンジしないと絶対に衰退します。
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