こんなに「日本企業がケチになった」根本的な原因 「賃上げ」も「設備投資」もしなければ縮小は必然

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(6)政府の生産的支出(PGS)

当然ながら、政府が生産性を向上させるための生産的支出を減らせば、企業も新しい投資を控えることは十分ありえます。

ECBの論文の指摘どおり、財政の厳しいイタリアやスペインのように日本も生産的支出(PGS)を減らしてきたので、企業の設備投資に悪影響を及ぼしていることは間違いありません。このPGS減少という視点に限って、反緊縮財政派の考え方は正しいと考えます。生産的支出を増やし、生産性を上げて、税金が増える形で財政健全化を計るのが王道だと言えます。

「デフレ」「株主至上主義」の影響は限定的

以上の理由は、デフレと関係のない、現実的な設備投資の説明要因です。日本企業の社長の1人として、実感している原因です。

(a)デフレと設備投資の関係

とはいえ、デフレと設備投資の減少に因果関係がないことはありません。たしかにデフレ下には金融が緩和され、金利が低下するため設備投資をしやすくなるかもしれませんが、借金は名目ですから、デフレによって期待できる利益が減れば、返済負担が重くなります。借金を控える動機になっているとも考えられます。

しかし世界的に見ると、利益率の拡大によって、借金を原資とする設備投資の割合は減っていますし、インフレが続いている国でも設備投資が減っています。ですから、日本企業が設備投資を控えている最大の理由がデフレにあるとは言えないのです。

また、これから労働人口が約3000万人減ることに比べて、今までのデフレ圧力は、企業がここまで設備投資を控えることの説明要因にはなりません。繰り返しですが、デフレになっていない先進国でも、企業の設備投資は減っているのです。ですから、日本のデフレが日本企業の設備投資減少の十分な説明要因になることはないのです。

(b)株主至上主義と設備投資の関係

資本コストが上がっていることが、企業投資が減っている理由だとする主張もあります。資本コストとは、株主が求める資本の収益率です。株主至上主義になったから資本コストが高まり、世界的に投資が減っているという説があります。西洋資本主義やハゲタカによる悪影響とよく言われます。表面的な理屈として、もっともらしく聞こえます。

しかし、これも十分な説明にはなりません。そういう圧力を受けているのは主に上場企業です。上場企業は360万社ある日本企業のうち約4000社にすぎませんし、上場企業で働いている日本人労働者は全体の2割にもなりません。

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