こんなに「日本企業がケチになった」根本的な原因 「賃上げ」も「設備投資」もしなければ縮小は必然

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縮小

なお、設備投資は人口の増減に先行しますので、設備投資の対GDP比率は人口増加時代には先行して増加する半面、人口減少時代には先行して減少します。

日本ではこれから生産性年齢人口が大きく減ります。2060年までに労働人口が3000万人、消費者も3000万人減ると予想されているのです。これでは、企業が設備投資を控えるのもある意味当然と考えられます。

(2)高齢化の影響

人口減少・高齢化が進むと、国の財政が苦しくなる傾向にあります。これからの日本のように高齢者の数が減らずに、納税者の数が減れば、1人ひとりにかかる社会保障の負担は重くなり、税率は上がります。

企業は、社会保険料が増加すると見込めば、投資を控えると考えられます。

若い人から高齢者に移転される所得が増えれば増えるほど、若い人は貧乏になります。当然、単価の高い贅沢品の需要が減ります。例えば、年収400万円の人の税負担が100万円から200万円に増えた場合、可処分所得は300万円から200万円に減ります。

この100万円は高齢者に回りますので、高齢者が消費を減らさないかぎり、個人消費は総額では減りません。しかし所得が移転されることによって、若い人の需要が減ります。

一般に、若い人ほど家や車、家電、旅行など、高額な買い物をする傾向にありますので、その需要を支える設備投資も先行して減ってしまうのです。高齢者の需要は、一般的に、相対的に設備投資の比率が低い業種に集中しますので、設備投資の低迷につながります。

海外直接投資の寄与は案外、限定的

(3)海外直接投資

国内の人口が減って内需の見込みが弱い場合、国内で余った供給を海外に輸出することは1つの選択肢です。

インバウンド戦略はその最たる例です。減少する日本人観光客の代わりに、外国人に日本を観光してもらう戦略ですので、輸出政策です。そこに日本政府が生産的支出を使って、インフラ投資をしています。最も健全な経済政策の例の1つでしょう。

残念ながら、日本企業のうち、輸出をしている企業の割合は非常に少ないのが実態です。そのため、廃業なども含めて、供給を減らしている傾向もあります。これは当然、設備投資の減少要因となります。

また、対外直接投資が国内の投資を押し下げているという主張もあります。たしかに従来、一部の日本企業は輸出をせずに、海外に直接投資をしてきました。その悪影響がGDPに表れています。

とはいえ、日本の対外直接投資を過大評価してはいけません。特にアメリカの場合、海外投資を増やせば増やすほど国内の投資喚起にもつながるというデータもあります。対外直接投資が単純に悪影響だけを及ぼしているとは言い切れないようです。

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