こんなに「日本企業がケチになった」根本的な原因 「賃上げ」も「設備投資」もしなければ縮小は必然

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縮小

事実、日本では、大企業より中小企業のほうが設備投資を減らしています。特に1990年以降は、その傾向が強いです。それによって、中小企業の設備年齢は1990年以降、大企業と比べて非常に古くなっています。

中小企業は外部株主がいない家族経営が多いですから、株主至上主義とは関係のない世界です。株主至上主義の強化と日本企業の設備投資減少は同じ時期に起きていますので、それが原因だと考えたくなるのはわかりますが、かなり無理のある合成の誤謬です。

イノベーション投資に期待するしかない

人口減少の悪影響をそこまで受けないのは、イノベーション投資です。

イノベーションの結果生まれた商品は、人口が減っても、普及率がピークアウトするまでは売上の増加が期待できます。ですから、日本企業の設備投資を増やすには、イノベーション投資を増やす政策が最も筋がいいと考えられます。

しかし残念ながら、ここも3つの問題があります。

まず、政府の生産的支出の減少が悪影響を及ぼしています。政府が投資の道筋を示して、お金を出して、民間の投資を喚起するべきですが、日本政府は長年、社会保障を増やすために、生産的支出を減らしてきました。

もう1つは既得権益です。イノベーションを起こす商品は、既存企業に対して悪影響をもたらす場合が多いです。残念ながら、今までは政府が既得権益に過剰に配慮する傾向がありました。日本は新規参入を徹底的に潰す傾向がありますので、イノベーションが起きにくいのです。

最後に、イノベーションを起こす企業は新しい企業が多いですが、日本は新規起業の比率が低いので、イノベーションも起きにくい状況です。

総括すると、日本経済の衰退の原因は、企業の緊縮戦略にあります。そして日本企業が緊縮戦略をとる主因は、以下の4つです。

(1)人口減少と高齢化
(2)政府の生産的支出の減少
(3)中小企業の経営者の高齢化問題
(4)中小企業の後継者不足の放置

デフレやグローバル化、消費税の引き上げなどは、これら4つの主因に拍車をかけているだけの副因にすぎません。

今回は、需要側から日本経済を見てきました。

経済学では、需要は「個人消費(C)+投資(I)+政府(G)+純輸出(X)」で表されます。世界銀行の2019年のデータによると、世界全体のGDPは、個人消費が63%、投資が20%、政府支出が17%という構成になっています。最も小さいのが政府支出で、最も変動しやすいのが投資です。

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