個人情報に鈍感な人に伝えたいGAFA規制の意味 個人の小さな損害を放置すると市場が歪む

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デジタル・プラットフォーム事業者は、消費者に対して優越的地位にあります。この力の不均衡があることを前提に、消費者の期待に反して不当に個人情報を収集・利用する場合には、独占禁止法の優越的地位の濫用規制の適用があると考えられてきました。

実際、公正取引委員会は、2019年12月に「デジタル・プラットフォーム事業者と個人情報等を提供する消費者との取引における優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方」を公表し、優越的地位の濫用となる行為類型として個人情報等の不当な取得や利用を例示しています。

2020年には「特定デジタルプラットフォームの透明性及び公正性の向上に関する法律」が成立し、デジタル・プラットフォーム事業者に対し契約条件の開示や変更時の事前通知などが義務付けられるようになりました。

ドイツ、フランスの取り組み

ドイツでは、連邦カルテル庁が2019年2月に、フェイスブックの個人情報の収集が市場の支配的地位の濫用に該当するとして、フェイスブック以外の第三者からの個人情報の収集の禁止を命じました。

連邦カルテル庁は、フェイスブック利用者がSNS利用者の95%以上を占めており、フェイスブック以外の第三者が提供するサービスからも個人データを収集していることに着目したのです。

このような大量に個人データを収集する方法が、個人の自由な同意に基づいていないというGDPR(EU一般データ保護規則)違反を指摘したうえで、搾取的な取引条件を利用者に課していることを認定しました。

すなわち、フェイスブックのビジネスモデルが支配的地位を築き上げた背景に個人情報の違法な収集方法があり、個人データ保護法違反の考慮事項が競争法違反としても認定されたのです。ちなみに、連邦カルテル庁の決定は、連邦通常最高裁においても支持されました。

フランスでも、データ保護監督機関であるCNILが、2019年1月にグーグルに対して5000万ユーロの制裁金の支払いを命じました。グーグルのプライバシーポリシーには、個別広告の設定については5回、位置情報の設定については6回、それぞれのウェブページを進まない限り変更できず、利用者にとって情報が見つけにくくなっていました。

そのため利用者へのデータ処理に関する情報提供が不十分であったこと、そして広告配信について利用者からの同意の取得の仕方が適切でなかったことが違反の理由となりました。このように、GAFAをはじめとするデジタル・プラットフォーム事業者の個人データの取り扱いについては、規制の厳しい目が向けられてきたのです。

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