個人情報に鈍感な人に伝えたいGAFA規制の意味 個人の小さな損害を放置すると市場が歪む

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ちなみに、GDPRでは、巨大企業への個人情報の集中を回避するための政策的権利としてデータポータビリティー権が認められています。データポータビリティーとは、個人が自らの個人データを持ち運ぶことを意味し、A社が保有する電子メールをB社へと移転させることなどが想定されます。

データポータビリティー権は、競争政策と関連しており、消費者が特定のサービスにロックインされないよう、個人に選択肢を付与することを狙いとしています。なお、データポータビリティーは、大きなプラットフォームへの乗り換えをする利用者が増えてしまえば、かえってGAFAのサービスを増強する道具にもなる点で、その運用に留意が必要となります。

他方で、GAFAを狙い撃ちするような魔女狩りの立法は、本質的な問題の解決にはなりません。またGAFAへのむやみな規制は、自由な情報流通への検閲を形成し、社会のイノベーションを萎縮させることにもつながりかねません。

では、巨大デジタル・プラットフォームはなぜ規制されるべきなのでしょうか。

「独占禁止法の父」が言ったこと

ここで参考となるのが、プライバシー権のみならず独占禁止法の父でもあるルイス・ブランダイスの議論があります。ブランダイスは、1914年「巨大さの呪縛」という論文を公表しました。巨大企業が競争を阻害し、競争がなくなることで産業の自由が抑圧され、民主主義がゆがめられ、究極的には人間性の支配につながることを論じました。

その後、ブランダイスの大企業への不信感は、連邦最高裁の判事として、1933年Louis K. Liggett Co.事件において、次のように示されました。

「われわれの過去の真の繁栄は、大企業から生じたものではなく、小さな人間の勇気、エネルギー、そして叡智を通じてこそ実現できたのである。多くの人々の能力を企業の支配から解放することによってのみ、そして彼らにリーダーシップの機会を再び開くことによってのみ、われわれの未来への自信を取り戻し、今ある苦難に打ち勝つことができる」

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