サムスンの絶頂期が永続するとは思わない--李潤雨・サムスン電子副会長
危機を好機に成長した「電子のガリバー」
この局面で李会長が選択したのが、先進技術やデザインといった付加価値の追求だ。ソニーや日立製作所といった先進企業から、積極的にエンジニアやデザイナーを巨額の報酬を提示して招聘した。00年代に入って、ITバブル崩壊に見舞われた日本メーカーが続々と事業と人員のリストラを進めると、加速度的に人と技術を吸収していった。
いわば、危機を好機に成長した「電子のガリバー」。08年の金融危機からもいち早く脱却し先進国メーカーを引き離す。その中で何をおそれ、またチャンスと見ているのか。韓国・江南にあるサムスン電子本社で、最高幹部の李潤雨副会長(取締役会議長を兼務)を直撃した。
--李会長が、強烈な危機感を訴えて経営の最前線に復帰しました。サムスン電子の業績は極めて好調。いったい何が危機なのですか。
弊社の10年度売上高は1100億ドルを上回る見通しです。この年商規模は、米ヒューレット・パッカードや独シーメンスと肩を並べる水準。わが社は確かに、IT・ハイテク業界を牽引するリーダー的な存在に立っています。
しかし、業界の変化を見てください。私たちの既存事業を脅かす「新しいビジネス」がいくつも誕生しているのです。既存事業そのものに目を向けても、今まででは予想もできなかったような、さまざまな経営管理の問題が生じています。
IT・ハイテク業界では、アップルのような、サービスとハードウエアを一体化させたビジネスの誕生や、グーグルやツイッターのようなITサービスを生み出したプレーヤーがいます。既存事業については、トヨタ自動車のリコール問題を他山の石に挙げることができますが、足元の状態がよいからといって、それが永続するとは考えていません。