トヨタが水素エンジンでレースに挑む深い意味 EV化だけがカーボンニュートラルの解ではない

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驚くべきことにトヨタの水素エンジンは、すでにパワーとトルクについては最高出力272PSを発生するノーマルエンジンとほぼ同等レベルにあるという。水水素はガソリンエンジンと同じ排気量では熱量が小さくなるが、ターボ付きならば空気と水素をどんどん押し込んでパワーを稼ぐことができる。また、水素は着火しやすく、高速燃焼が可能なためレスポンスに優れトルクも出しやすい。素早く、完全に燃えきってくれるということは、高回転化にも有利と言える。

着火しやすく、高速燃焼が可能な水素エンジン。燃えすぎる課題については、トヨタが培ってきた直噴技術が解決に役立っている(写真:トヨタグローバルニュースルーム)

問題はむしろ燃えすぎることで、内燃エンジンにおいてはプレイグニッション、つまりプラグ点火させる前に意図せず着火が始まってしまう事象が課題となる。これについて開発陣は、トヨタがこれまで培ってきた直噴技術が解決に大いに役立っているという。必要なときに、必要な分だけ、必要な所に燃料を噴射する。こうして水素の燃焼ポテンシャルをフルに引き出しているのだろう。

なお、今回の車両の富士スピードウェイの周回タイムは、手元計測では2分4~2分5秒前後と、ホンダ「フィット」やマツダ「ロードスター」などST-5クラスの車両とほぼ同等だった。車重が大幅に増えていること、今回が初走行で全開では走れていなかったことなどを考えれば、スピードは十分と言えそうだ。

ライバルの2~3倍近いピットストップか

問題は燃費である。水素はガソリンに比べてエネルギー量は大きいが、エネルギー密度が低い。よって大きなタンク容量が必須となったのだが、それでも今回のマシン、連続周回数は12~13周程度だという。つまり一度の水素充填で30分弱しか走ることができていない。レースは24時間だから単純計算でピットストップは48回以上。おそらくライバルの2~3倍近い回数になる。ただし、豊田章男社長は会見の時点で「ピットの耐久レースになりそうですね」と話していたから、この件はすでに織り込み済みということだろう。

(写真:トヨタグローバルニュースルーム)

それじゃ話にならない……と思われるかもしれないが、燃費については今後まだまだ多くの改善の余地が残されているという。水素は着火しやすいためリーン燃焼させやすく、空気余剰量5~6倍も可能と言われる。現状はそこまでリーンに振っていないということだから、まだまだ伸びる余地は大きいと言えそうだ。

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