ワクチン接種により感染予防効果がどれだけ持続するか、まだよくわかっていない。ファイザーのブーラCEOは、同社のワクチンを2回接種完了後6~12カ月以内に3回目の追加接種(ブースター)が必要になり、その後も年1回の再接種が必要になるだろうと述べている。また、感染者の再感染も増加しつつある。
つまり、ワクチン接種を進めなければ感染は「収束」しないが、それでコロナが「終息」するわけではない。各国でワクチン・ナショナリズムが高まる中、ワクチン接種オペレーションの卓越性をめぐる競争が繰り広げられている。カギになるのは、ワクチン・サプライチェーン強靭化である。突然の供給停止や変異株などの脅威があってもすぐ修復できる、長期的に持続可能なワクチン・サプライチェーンの構築が求められている。
サプライチェーンのリング(輪っか)を繋ぐ難しさ
COVID-19に対し効果的で安全なワクチンは驚異的な早さで実用化された。それを可能にしたのは新型コロナで初めて承認された新型ワクチン、遺伝子ワクチンであった。
遺伝子ワクチンのひとつとして研究されていたメッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンは、イギリスを振り出しにイスラエルや欧米で緊急使用が許可された。2020年1月半ばに中国の研究者が新型コロナウイルスの遺伝子配列を公表してから数時間後、ドイツのバイオベンチャー、ビオンテックはmRNAワクチン候補の1つ目を開発していた。ファイザーはビオンテックのがん治療を目的としたmRNA技術に注目し、すでに共同開発を進めていた。両社はすぐさまコロナワクチン開発に取り組んだ。12月8日、ファイザー・ビオンテックのmRNAワクチンはイギリスでついに実用化された。
鎖は、ひとつでもリング(輪っか)が開いてしまえば切れてしまう。ワクチンの開発、製造、国際輸送、国内輸送、そして接種まで、サプライチェーンが切れないようリングを繋がねばならない。シリンジ(注射器)や注射針の確保も必要である。しかもmRNAは不安定な物質であるため、超低温の冷凍状態を維持するコールドチェーンも求められる。
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