インド国内のワクチン需要急増は、新興国や中低所得国へのサプライチェーンに大打撃である。それは先行してワクチン接種を進める先進国にとっても他人事ではない。世界のどこかで新たな変異株が発生する限り、コロナは収束しないからである。
新型コロナウイルスはパンデミックとともに急速に変異を続けている。ウイルス学の世界的権威でmRNAワクチンの開発にも取り組んできた河岡義裕・東京大学医科学研究所特任教授によれば、ウイルスに対して「戦いと思っているのは人間だけ」であり、ウイルスは「ランダムに変化しているだけ」という。変異はウイルスが生き残るために選んだ手段ではなく、遺伝子が複製されるときの「間違い」でしかない。
パンデミックが続く限り、人類はウイルスの気まぐれな変異に翻弄され続ける。
日本はワクチン・サプライチェーンの強靭化を急げ
4月23日、3度目の緊急事態宣言を発出した菅首相は記者会見で「ワクチンという武器」に言及した。日本はその武器を輸入に頼っている。マスク争奪戦で苦しんだ日本は、ワクチン争奪戦にも巻き込まれることになった。
日本はワクチン・サプライチェーンにおいて、開発と製造を海外に依存している。ワクチン開発のためには産官学の垣根、そして国境も超えた連携が必須であることがコロナでは明らかになった。しかし日本に遺伝子ワクチンのようなバイオイノベーションを生み育てる力は不十分だった。新型コロナ対応・民間臨時調査会(コロナ民間臨調)報告書は、規制官庁としての厚労省にワクチンを戦略物資として育てる産業戦略が欠けていたこと、結果としてコロナワクチンへの対応が「3周半遅れ」(政府関係者)になってしまったと指摘した。
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