臓器提供「コロナ禍で激減」の中に見えた課題 大事なのは臓器提供者とその家族の尊厳

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脳死による臓器提供は、心停止後の提供より移植できる臓器の数が多い。心停止は、すい臓、腎臓、眼球(角膜)の3臓器であるのに対して、脳死は心臓、肺、肝臓、すい臓、腎臓、小腸、眼球(角膜)と7臓器と定められている。また、脳死のドナー1人当たりの移植臓器数は、アメリカが3.5に対して、日本は5.3で非常に高水準であることからもわかるように、脳死臓器提供で救える命は確実に増えている。

脳死下臓器提供における臓器摘出にあたっては、家族の総意のもとで承諾を得た後に、合計2回の法的脳死判定をしなくてはいけない厳格なプロセスがある。脳死とされうる状態と判断されてから、臓器摘出手術終了までに平均63時間52分を要するという調査がある。家族が臓器提供をすると決断することにより、通常診療をする提供施設の医療者や移植コーディネーターたちは、ほぼ3日間の徹夜に近い勤務となる。

メディカル・データ・ビジョンが保有する診療データベースで、2018年1月から2020年12月までのデータがそろっている359病院を調べたところ、病院の臓器提供に対する取り組みを評価する「脳死臓器提供管理料」の算定件数は、2018年が9件(5病院)で2019年が13件(7病院)にとどまっている。同管理料は2020年4月から金額が倍に引き上げられたものの、同年の算定件数は14件(6病院)と低水準だ。

制度は整いつつあるが…

「臓器の移植に関する法律」が1997年10月に施行され、脳死後の臓器提供が可能になったが、提供者本人の書面による意思表示に加え、家族の承諾が必要だった。その後、本人の意思表示が不明であっても家族の承諾での脳死提供や15歳未満の脳死後の臓器提供ができる改正法が2010年7月に全面施行となり、制度面の整備が進んできてはいる。

公益社団法人日本臓器移植ネットワークの事業推進本部本部長で医師の林昇甫氏は、「制度は整いつつあるが、真に臓器提供しやすい環境になったかというと、まだまだ不十分だ。10年以上前に法改正されたが、ドナー家族への負担や取り巻く環境はほとんど変わっていない」と問題提起する。

公益社団法人日本臓器移植ネットワークの事業推進本部本部長で医師の林昇甫氏(筆者撮影)

林氏が問題視するのは、家族が臓器提供を承諾した場合にのみ法で脳死が死であると定義されているという点だ。

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