アメリカ企業がESGや文化戦争に目覚めた理由 将来の従業員や顧客の支持を考えれば得策だ

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ジョージア州投票権法(SB202)の成立をきっかけに一段と企業の社会政策への姿勢が問われている(写真:AP/AFLO)

従来、アメリカ産業界の政治への関与は分野が比較的限られていた。企業は共和党への政治献金やロビー活動を通じ、主に自社の収益に直結する経済政策に特化して影響力を行使してきた。一方、社会問題など経済政策とは無縁の分野については、企業はこれまで極力、介入しないようにしていた。企業は共和党との間に、仮に社会問題をめぐる意見に相違があっても、これを公の場で論評しないという暗黙の了解があったとも指摘される。だが、長年続いたその構図は近年、崩れ始めている。

引き続きアメリカ産業界は民主党の推進する増税や規制強化に反発し、共和党の推進する減税や規制緩和をはじめとした経済政策を支持している。しかし、社会政策では状況が変わってきている。若年層を中心にアメリカ社会が徐々にリベラルな主張にシフトする中、それに抵抗する共和党の社会政策を企業が声高に批判する場面が増えているのだ。

特にトランプ前大統領が共和党支持基盤にアピールするために繰り広げた文化戦争で、企業と共和党の亀裂は深まることがあった。今日もその戦争は続いている。その結果、経済政策に対する方針では民主党支持者から批判される一方、社会政策についての姿勢では共和党支持者から批判され、立ち位置を見失っている企業も続出している。

企業は党派間の政治闘争に巻き込まれている

「黒人の命は大切(Black Lives Matter、略してBLM)」は2013年に始まり、徐々に社会そして企業にも浸透してきたが、2020年5月に起きたジョージ・フロイド氏暴行死事件後、一気に企業の人種問題への関与が拡大した。

2019年にはアメリカを代表する企業のCEOで組織するビジネスラウンドテーブルが、株主重視の株主資本主義から顧客や地元コミュニティなどステークホルダー全体を重視するステークホルダー資本主義への移行を宣言。大企業の社会政策への積極的な関与の姿勢が見られ始めた。

昨年の1月、非営利組織デモクラシーワークス(Democracy Works)とタレントエージェントCAAの非営利組織CAA財団が連携し、秋に大統領選を控える中、幅広い国民に投票を促すことを使命とする産業連合「シビックアライアンス(Civic Alliance)」を創設した。シビックアライアンスは今日、アメリカ産業界の政治への関与に大きな役割を担っている。同連合には初期メンバーのアマゾン、フェイスブックなどシリコンバレーのハイテク企業をはじめ、リベラルな企業に限らず、今や全米を代表する大手企業を中心に多岐に渡る産業から1100社以上が加盟している。

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