アメリカ企業がESGや文化戦争に目覚めた理由

将来の従業員や顧客の支持を考えれば得策だ

こうした動きが続く中、アメリカ産業界がこれまで以上に政治に深く関与するきっかけになったのが、3月末のジョージア州投票権法(議案番号:SB202)の成立だ。成立後に波紋が広がり、広範囲にわたるアメリカの産業界が明確な反対姿勢を示したのだ。

ジョージア州投票権法の中には期日前投票の拡大など現状よりも投票権を拡大する条項もあるものの、全体としては民主党が批判するとおり、マイノリティの投票権を制限する内容となっている。特に批判が集まったのが投票所で待っている有権者に対し第3者が水や食べ物などを提供する「ラインウォーミング」を禁止したこと、不在者投票で身分証明書を必須としたこと、そして選挙監督権を州務長官から共和党が握る議会に移管したこと、などだ。

バイデン大統領は同法を「21世紀のジムクロウ法(1876~1965年まで存在した人種隔離制度)」と評した。シビックアライアンスをはじめアメリカ産業界の多くが反対姿勢を明確にした。

従業員や顧客の支持を考慮し、行動に出る企業

そもそも、SB202をジョージア州が審議するきっかけを作ったのは、2020年大統領選を不正選挙だと訴え続けるトランプ氏であると言っても過言ではない。

選挙後に激戦州などで選挙の不正をめぐる裁判が行われたが、選挙結果を変えうるような不正は見つからず、ことごとくトランプ陣営側の敗訴に終わっている。だが、ロイター/イプソス世論調査(3月30~31日実施)によると大統領選から約5カ月が経過している今日でも、同選挙はバイデン氏が不正によってトランプ氏から勝利を奪ったもの、と捉えている共和党支持者は6割にものぼる。共和党は選挙後、ジョージア州に限らず全国で、選挙制度に不満を抱いている支持者に応えなければならず、投票権法改正に向けて州議会の審議が活発化している。

ジョージア州の投票権法成立に企業までが反対するようになったのは、人種問題にこだわる急進左派のアクティビストの働きかけによるものである、と共和党は主張する。確かにそうした要素もあるが、企業はイデオロギーではなく、あくまでも収益拡大のために動いていると思われる。

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