日経平均株価が再浮上するのはいつになるのか 日米両国の「株価格差」はどこにあるのか?
そうしたなか、一足先に回復経路に復していた製造業は目を見張る強さを示している。最も有名な企業景況感指数であるISM製造業景況指数は4月に64.7と1983年来の高水準に到達した(好不況の分かれ目は50)。
ISMの60超えは、2000年以降で2004年と2018年の2回の局面しか経験したことのない水準であるから、この異常値とも言うべき数値は目下の回復ペースがいかに力強いかを物語っている。
もっとも、ここで注意が必要なのは「方向感」と「水準感」の区別だ。ISM製造業景況指数は企業に対して「前月」との比較で景況感がどう変化したのかを問う指標であるから、その数値は前月比で見た改善ペースを示している。つまり現在の製造業は「方向感」で見ると、歴史的な好況にあるということだ。
一方、「水準感」はどうであろうか。ISM64.7という数値から想起されるのは工場フル稼働の状態だが、鉱工業生産指数に目を向けると、実のところコロナパンデミック発生前の水準を明確に下回っている。また設備稼働率にも余裕がある。コロナパンデミック発生前の2020年1月に75.2%だった設備稼働率は2020年4月に60.1%まで低下した後、上昇傾向をたどったものの、直近3月時点で74.4%にすぎない。前回ISMが60に到達した2018年後半の設備稼働率は77%程度であったから、同じISM60超でも生産設備の稼働状況は大きく異なる。
「方向感」と「水準感」で得られる2つの示唆
こうした「方向感」と「水準感」の温度差を認識することによって2つの示唆が得られる。1つは、まだ生産に伸びる余地が残されていることだ。過去にISMが60に到達した局面は、仕入れ価格が高騰したり、納期が延びたり、受注残高が積み上がるといった事象が発生し、生産が“これ以上ないくらい”に活況を呈する状態であった。それゆえ、ISM60到達は景気が「天井」にぶつかったサインと認識されており、株価もISM60到達でピークアウトすることが多かった。「方向感」と「水準感」の違いを認識すれば、今回のISM60到達が「天井」ではないことがわかる。
もう1つは、今後生産が回復基調を維持すれば、生産能力増強のための設備投資が増加し、その結果、日本からの資本財輸出が拡大するという示唆だ。アメリカの製造業は復調著しいとはいえ、まだ設備投資に火がつく状況にはない。アメリカの設備投資動向と日本の輸出が密接な関係を持つことを踏まえれば、アメリカ経済回復の恩恵は今後はっきりとしてくると期待される。
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