「ゼロコロナ」志向こそが人と社会を壊していく 森田洋之医師に聞く。「ワクチン過信にも注意」

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――日本で流行する感染症はインフルエンザです。今年インフルエンザはなぜ流行しなかったのでしょうか。

2つ説があって、マスクなどコロナ対策がインフルエンザに効いたというのが1つ。もうひとつがウイルス干渉。現時点では正確にはわかりませんが、状況から判断するに僕は後者が有力だと思います。なぜなら通常インフルエンザの流行は1月中頃の最も寒い時期にピークを迎えるのですが、2019年に関しては、コロナが流行する直前の11~12月にインフルエンザの流行が突然収束してしまったのです。その頃から新型コロナウイルスが広がり、インフルエンザウイルスに取って代わった可能性もあります。

(注)ウイルス干渉:複数のウイルスのうち、一方のウイルスが世間で流行すると、他方のウイルスが流行しないという現象。

インフルエンザでもPCR検査をして全例入院と言い出したら、それこそ医療崩壊になります。国立感染症研究所の分析などでインフルエンザでは毎年1000万人の感染者と1万人ぐらいの死者が出ているとされています。それでもこれまでの社会はインフルエンザの流行をある程度許容しながら通常の日常生活を送ってきました。結果論ですが、欧米のようなロックダウンをしなかったにもかかわらず超過死亡を出さなかった日本などの東アジア地域では、新型コロナもインフルエンザと同じような扱いでもよかったのかもしれません。

ウイルスの排除でなく、免疫機能を高めることが大事

――新型コロナは無症状でもうつるのが怖い、とされました。

インフルエンザでもその可能性はあると思います。ランセット誌(Lancet)の論文で、血液検査の結果インフルエンザに感染した人の75%は無症状だったと報告されています。ウイルスはどこにでもいるし、どこから入ってくるかわからない。しかし、体内に入ったからといってその人が発症するとは限らない。ウイルスを完全に排除するのは無理なのです。

――ところが、立憲民主党などはいまさら「ゼロコロナ」と言い出しました。昨年からそれを主張するテレビや新聞、経済学者がいて「大量検査で隔離」などとジョージ・オーウェルの『1984年』のようです。

僕もマトリックスの世界に迷い込んだかのように感じることがあります。人間をずっと閉じ込めておくのですか。医師でもコロナをいったんゼロにせよ、と主張している人もいます。それ自体非現実的ですが、大量検査で仮にゼロになったとして、グローバルに広がったウイルスに対して、日本はこの先ずっと鎖国を続けるのですか、と問いたい。人間が駆逐に成功したウイルスは天然痘のみで、それほど困難なのです。

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