「ゼロコロナ」志向こそが人と社会を壊していく 森田洋之医師に聞く。「ワクチン過信にも注意」

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――「2020年はパンデミック流行の年で、死者が例年よりも減った」なんていう記録を後生の人が見たらワケがわからないでしょうね。

欧米は明確に超過死亡が増えていますから、パンデミック被害があった。今回の新型コロナでは世界的に感度の高いPCR検査というものが積極的に使われました。しかし、PCRの存在しない時代だったら、「欧米ではなんか酷い病気が流行ってたくさん人が死んでいるけど、東アジアではほとんど被害がなかったね」で終わっていた可能性もあります。

ちなみに、日本、中国、韓国、台湾、これが欧米の数十分の1~数百分の1の死者数です。4カ国すべてこんなに低いということが起こる確率は天文学的なものです。偶然はありえない。しかもこれらの国々では欧米のロックダウンのような強制的措置はほとんど行われず、日本の自粛要請のような比較的緩い対策が主体でした。そういう意味ではもしかしたら、感染症対策はしたほうがいいかもしれないけど、しなくても変わらなかったかもしれない。

免疫の違いは大きかったのに、欧米に引きずられた

新型コロナを例えて言うなら、「山火事が起こりました。火元は中国でした。しかし、そこではまもなく鎮火して、近隣もくすぶり程度でしたが、遠くで燃え上がりました」というわけです。なぜそんなに、違うのかといえば、燃えやすさが違うに決まっています。つまり免疫の違いです。

免疫学の世界では地域、民族によって免疫の強さが異なるというのは当たり前の話です。16世紀のインカ帝国は、実はスペイン人たちの武力によってではなく、持ち込まれた天然痘で滅ぼされたのです。欧州では当時すでに多くの人が天然痘の免疫を持っていたわけです。

昨年の春節の時期、2020年1月~2月に中国から日本には101万人の旅行者が来ていました。同時期にアメリカに行った人は35万人です。そのときに、コロナも上陸していたのかもしれません。感染対策はまだしていませんでしたが、日本では感染がそれほど広がらず、欧米では大爆発した。

――ジョンズホプキンス大学の調査では、4月23日時点で世界の新型コロナによる累計死者数は306万人です。ただ、感染症では毎年アフリカを中心に多くの死者が出ているのに、普段はあまり報道されない。新型コロナは欧米で爆発したから報道も過熱したのではないでしょうか。

そのとおりです。三大感染症(エイズ、結核、マラリア)では毎年250万人、毎日7000人がなくなっています。新型コロナについてはいろいろな面で欧米に引きずられたと感じています。

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