スペイン「オリーブオイル業界」知られざる窮状 アメリカによる報復課税で輸出量が激減した
もともとオリーブオイル、オリーブの実、ワインについてはライバルの生産国が数多くあり、最初の2品目についてはイタリア、ポルトガル、チュニジアがスペインに代わってアメリカでの市場を支配。こうした国の商品は、アメリカでは高関税は適用外だからである。ポルトガルとチュニジアの輸出実績はそれぞれ前者が従前比700%、後者が同850%の伸びたと、「エル・パイス」は報じている。
スペインのオリーブ業界は、バイデン大統領がこの問題を解消してくれると期待していた。実際、バイデン大統領は高関税の賦課を4カ月停止して、その間にEUとアメリカとの間で高関税の撤廃に向けて交渉を進めていくということになった。背景には、昨年11月、アメリカ政府もボーイングへの補助金を支給していたということが判明し、EUは報復措置としてアメリカからの輸入品に対して追加関税を適用することを決定していたことがある。
一度失った市場を取り戻すのは難しい
ところがその後、フランス、イギリス、イタリア、そして今回スペインがデジタルサービス税の適用を決定。これに対してバイデン政権は、該当する国からの商品に対して高関税の適用という報復措置で対抗しようとしている。
そして今回、スペインが5月からこの税金を賦課するということで、バイデン政権はその報復措置としてまずその標的となったのが、靴など履物製品だった、というわけだ。
現在のスペイン政府は、社会労働党と極左のポデーモスの連立政権である。これは筆者の個人的な見解であるが、これが右派の国民党が政権に就いていれば、今回のような税の誕生を見なかっただろう。というのも、国民党が政権についている時はこれまで、アメリカとは円滑な関係を維持してきたし、国民党は税金をできるだけ少なくするという政策を推進する傾向がある政党だ。一方、社会労働党政権はアメリカと摩擦を起こす傾向にある。
スペインの現政権はデジタルサービス税として年間で9億6800万ユーロの税収を見込んでいるが、これはあくまで推測であってはっきりとした根拠はない。しかも、コロナ禍でスペイン経済の柱になっている観光産業の回復は、今年は期待できない。こうした中にあってデジタルサービス税による歳入は予想を大きく下回る可能性の方が高い。
こうした中、デジタルサービス税の犠牲になろうとしているのが、スペインの靴・履物産業というわけだ。はたして、同産業を犠牲にしてそれに見合うだけの歳入を確保できるのか。オリーブ業界と同じく、スペインの靴・履物がアメリカで市場シェアをいったん失うとそれを回復させるには時間を要することになる。
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