スペイン「オリーブオイル業界」知られざる窮状

アメリカによる報復課税で輸出量が激減した

実はすでに、アメリカによる「高関税」の"犠牲”になっている業界がある。オリーブオイルや、オリーブの実、ワイン、オレンジ、チーズなどの業界がそれで、とくにオリーブオイルのアメリカへの輸出はピーク時に比べて90%減っているとも報告されている。

この問題は、ヨーロッパの航空機エアバスへの不当な補助金支援でアメリカのボーイング社の販売に悪影響を及ぼしたとして、アメリカが世界貿易機関(WTO)に訴えていたことに端を発する。WTOはこれを受け、アメリカの言い分を認めて、アメリカはEUからの輸入品に対して75億ドル(8100億円)相当の報復関税を課すことができるとしたのである。

そこでアメリカは早速、エアバスの工場があるフランス、ドイツ、イギリス、スペインからの輸入品に対し民間航空機の部門で10%、その他の農産品や工業製品の部門では25%の関税を課すことを決め、前トランプ政権時の2019年10月から適用された。

オリーブオイルの輸出量が激減

「報復関税」の影響は甚大だった。「オリーブオイル・タイムズ」によると、2020年のスペインからアメリカへのオリーブオイル輸出量(ボトル詰め)は前年比80%減少。それまでアメリカはスペインのオリーブオイル業界にとってEUに次ぐ、大きな市場だったが、これがあっという間に覆されてしまったのである。

こうした中、オリーブオイル輸出協会(Asoliva)のラファエル・ピコー会長は「これはもう悲劇だ。スペインのオリーブ業界の損失は多大だ。この分野では最も被害を受けている国だ」と「ボスポプリ」紙に嘆いている。

「ボトル詰めオリーブオイルへの25%の輸入関税でアメリカ市場から完全に追い出されてしまった」「これまでの投資はすべて失った。最近6年間、アメリカにおいて一番の輸出国であった地位もなくしてしまった」と付言して失望感をあらわに。アメリカ小売大手のウォルマートやコストコとの取引は90%失ったと語っている。

しかも、スペインからポルトガル、あるいは、イタリアにバルクで輸出して、そこで瓶詰めにしてポルトガル製、またはイタリア製として輸出しようとしても、原産地がスペインということでアメリカの門戸は閉ざされたままということのようだ。

こうした状況を前にして、ピコー会長は「エアバスへの不法な支援に対して、われわれオリーブ業界がどうしてその償いをせねばならないのか?」と、強い憤りを露わにしている。

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