「台湾有事」はアメリカが言うように近いのか 日米首脳会談が提起した日米安保の4論点

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にもかかわらず、アメリカが有事危機を煽る狙いは何かが、第2の論点だ。アメリカの何人かの識者がその狙いを解き明かしている。簡単に言えば、影響力を失いつつあるアメリカに代わって、日本を地域安全保障の「ハブ」にしようとする「深謀遠慮」である。

まず、ロバートD.ブラックウィル氏(外交問題評議会ヘンリー・A・キッシンジャー外交政策上級研究員)の近著「米国、中国、台湾:戦争防止の戦略」を紹介したい。彼は「同盟国、特に日本と協力し、中国の台湾への軍事行動に立ち向かい、台湾自身の防衛を助けるような新計画を準備する」必要を提言した。共同声明が台湾問題での日米連携を追求する論拠にもなっている。

もう1つはマイケル・グリーン元国家安全保障会議(NSC)アジア上級部長が2020年10月、菅首相が初の外遊先にベトナム、インドネシアを訪問した直後に「日本のような主要な同盟国が、地域の新たな安全保障枠組みの『ハブ』(中心)になることが求められている。菅の東南アジアへの訪問はその戦略を前進させる」と書いたのを見逃してはならない。

日本を地域安保のハブにしたいアメリカ

グリーン論文を読んだのかどうかは定かではないが、安倍晋三前首相は3月27日の自民党新潟県連主催の講演で、対中国政策について「インド太平洋地域がフロントライン(最前線)になった」「日米安全保障条約が本当に重要になってきた」と述べ、日本が「最前線」に立つ決意を鮮明にした。

第3の論点は、日本にアジア地域の安保の最前線を担う意思と能力があるかどうかだ。共同声明は冒頭で「日本は自らの防衛力を強化することを決意した」と書き、「2プラス2」の「能力の向上を決意」より強い表現だった。

日本にとって尖閣の視線の先にあるのが台湾問題。中国による尖閣奪取や台湾侵攻を過剰に宣伝することによって、(1)自衛隊の装備強化、(2)自衛隊の南西シフト、(3)日米共同行動、を加速しようという思惑が透ける。特に、中国が大量配備している地上配備型中距離ミサイルについて、防衛関係者は、台湾有事になれば沖縄の米軍基地を標的にする可能性が高いとみる。これに対抗して、南西諸島の陸自ミサイル部隊に、中国ミサイル搭載艦艇に対抗する役割も担わせようという動きも出てきた。

「2プラス2」時の岸信夫防衛相とオースチン国防相との会談では、台湾海峡で不測の事態が起きかねないとの懸念に基づき「台湾有事では緊密に連携する方針」を確認した。岸は「日本の平和と安定に大きく影響を及ぼす」として、台湾支援に向かう米軍に自衛隊がどのような協力が可能か検討する意思表明をした。岸は日米首脳会談の当日、台湾との距離が110キロメートルと最も近い与那国島の陸自ミサイル監視部隊を敢えて訪問し激励した。台湾防衛に向けた日本のサインだ。

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